北朝鮮の金正恩第1書記は、1月1日に発表した新年の辞で「経済発展」「人民生活の向上」を強調しているが、デイリーNKの咸鏡北道(ハムギョンブクト)の内部情報筋は「住民の反応は冷淡だ」と伝えてきた。毎年の新年の辞で「人民生活の向上」がコピペのように繰り返されているが、国が主導する経済の発展や変化は感じられないからだ。

情報筋は「現地住民は新年早々「堆肥戦闘」、つまり肥料を作るための「人糞集め」に駆りだされている。文字通り「クソ寒い」中での作業で、住民は不満たらたらだ」としながら、今年の新年の辞の批判が「不満のはけ口となっている」と語った。

新年の辞は、一字一句暗記することを求められる。全部覚えられなければ、生活総和(総括)の時に自己批判を迫られる。それが面倒なのでとりあえず覚えはするが、覚えるのも面倒でたまらない。

去年の新年の辞で金正恩氏は「農業、畜産業、水産業を発展させ、人民生活を向上させる」と言ったが、魚も豚肉も一回たりとも配給されず、肥料も配給されないために、人糞集めの作業をさせられていることから、「新年の辞など形だけ」「無用の長物」などと毒づくのも当たり前だ。住民の不満は留まる一方だ。

住民達は、「毎年毎年『人民生活の向上』を云々しているが、お上は民生よりも革命業績の強化(金正恩氏の偶像化や思想教育)にしか興味がないようだ」「経済を発展させると言って、去年やったことは銅像の建築しかない」
「魚の水揚げが多くても、どうせ配給をもらうのは軍人だけ」 「今年もまた『人民の食卓に磯の香りを』『果物の香りを』とか言っているが、結局香りで満たされるのは金正恩氏の食卓だけ」と愚痴っている。

さらに「首領様(金日成氏)は、人民生活向上の課題を自ら設定し、本当に実現させていたものだ」と孫(正恩氏)の出来の悪さを嘆き、「お上はハコモノを建てたと自慢しているが、最近の経済発展は人民自らの力で成し遂げたものだ」と、使えない水力発電所や高級レジャー施設の建設ばかりに力を注ぐ金正恩氏のやり方を批判した。

まがりなりにも配給が行われていた金日成氏の時代を「理想的な国のあり方」と考えている人が未だに多いようだ。国による配給システム、無償教育、無償医療で、頑張らなくてもそれなりに生きて行けた時代に郷愁を持つのは無理もないだろう。

商行為に対する統制が緩和され、暮らしは徐々によくなりつつあるものの、激しい貧富の格差が生じ、「頑張らなければ生きていけない」時代を迎えた北朝鮮だが、人々の意識はそう簡単には変わらないことを示している。

金正恩氏の新年の辞は「もはや戻ることのできない時代への郷愁」を煽り、人々の不満を高めているだけのように思われる。

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