北朝鮮の漁業政策は「朝令暮改」の典型だ。中国企業に操業権を与えたと思えば、乱獲を理由に操業を禁止する。漁業を奨励する一方で、小型漁船の操業を禁止するなど、一貫性がない。

洪原水産事業所の漁船(画像:労働新聞)
洪原水産事業所の漁船(画像:労働新聞)

10月には「海産物輸出禁止令」が発令されたが、軍主導で禁輸破りをしたせいか、中国東北の市場やネットショッピングサイトでは、北朝鮮産のカニやタラなどが大量に売られている。

漁業権を中国に売り渡す

そして、今度は西海岸の漁業権を、再び中国企業に売り渡す動きが出ていると米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じる。中国山東省の対北朝鮮情報筋は、次のように語った。

「平安北道(ピョンアンブクト)の鉄山(チョルサン)、塩州(ヨムジュ)、宣川(ソンチョン)の複数の水産基地から『漁場を借りてほしい』というオファーがきている」

情報筋によると、北朝鮮・鉄山の水産物輸出会社が、郡内の保山里(ポサンリ)の沖の55ヘクタールに及ぶ海域を貸し出すとの話を持ちかけた。

「契約書には、海域の緯度と経度が明記されており、漁業権を確実に保証するという意図があるようだ」(情報筋)

もともと、この海域では、アサリ、ハマグリ、マテガイなどの魚介類が豊富に獲れることで有名だ。しかし、90年代中盤に外貨稼ぎ会社が大量の人員を動員して貝をあらかた採ってしまったと言われている。その海域を改めて貸し出して、漁船の燃料や網を買う資金を儲けようとしているようだ。

中国漁船に漁民は戦々恐々

しかし、中国漁船は、底引き網で乱獲することから、資源の枯渇が憂慮されている。

金正恩第1書記は、今年の新年の辞で「人民の食卓の上に磯の香りを漂わせねばならない」と水産業の発展を強調し、水産事業所への現地指導を度々行っている。国営メディアも水産業をしばしば取り上げている。

11月28日の労働新聞では、咸鏡南道の洪原(本ウォン)水産事業所の漁師たちが、海上警報発令中にもかかわらず、大波と決死の戦いを繰り広げながら漁を行っていると報じた。

労働者の安全より、最高指導者の指示貫徹が優先される北朝鮮らしい光景だが、実際に漁が行われたのか、単なる演出なのかは定かでない。

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