平壌は単なる北朝鮮の首都ではない。土台(出身成分)がよく、思想的にも問題がない「選ばれし者」だけが居住を許される特別な都市だ。そんな革命の首都平壌でも、貧富の差が拡大しつつある。

平壌市内の老朽化したマンション(画像:Comrade Anatolii)
平壌市内の老朽化したマンション(画像:Comrade Anatolii)
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>「貧富の差」が流行語>

平壌中心部の倉田通り、未来科学者通りなどには、派手な高層建築が次々に建てられ、ビジネスや不正で大金を手にした幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)は、高級レストランで散財している。

一方、同じ平壌でも町外れには電気も来ないあばら屋が立ち並んでいる。そんな現状に対して、庶民層から不満の声が上がっていると現地のデイリーNKの内部情報筋が伝えてきた。

最近、平壌市民の間でよく言われる言葉は「貧富の差」だ。

ビジネスで大儲けした幹部やトンジュは「外貨タンス預金」を引き出そうとする国の消費奨励策に乗っかり、贅沢三昧。当局は、富裕層にカネを使わせるために、サウナ、ジム、カフェなどの施設を次々に建設し、「人民愛を実践している」と宣伝する。

情報筋は「労働党中央や外貨稼ぎ機関の幹部が、高級レストランで1000ドルを使うのを目撃した」と語る。1000ドルは、一般家庭の1年分の食費に相当する額だ。

しかし、華やかな中心部と異なり、町外れは開発は遅れ、インフラも整備されていない。10年前と比べてみて何ら変化も発展もがない。富裕層が散財する姿を見た庶民たちは「不満を超えて敵愾心すら抱きつつある」と、情報筋は語る。

また、いびつな給与体系も、貧富格差を拡大させる要因となっている。

外貨稼ぎに貢献している国営企業、例えば平壌紡績工場の月給は30万から100万北朝鮮ウォン(約4500円~15000円)だ。これとて決して「高給取り」とは言えないが、町外れの零細工場の月給3000~4000北朝鮮ウォン(約45円~60円)と比べれば、遥かにマシだ。

コメ1キロ分の給料しかもらえず、生きるために市場で商売に励んでいる庶民を横目に、富裕層は散財を続けている。

こうした理不尽な貧富格差を庶民たちは次のように言い表す。

「党幹部や大臣などが、国の富の1割を独占する。2割から4割がトンジュ、残りを庶民でわけあっている」

世界の人口の上位1%が、全世界の富の44%を独占している(クレディ・スイス調べ)ことを考えると、北朝鮮の貧富の差はそれほどでもない。しかし、社会主義を標榜し「貧富の差はない」という建前を掲げている国にしては、やはり大きすぎる。

かつては、「トウモロコシ粥をすすりひもじい思いをしてでも、この街(平壌)にしがみつく」と言われていたが、昨今の平壌に嫌気を差し、一部の平壌市民の間からは、次のような声も出ている。

「汚い連中の顔を見て暮らすのなら、田舎で農業でもして暮らす方がまだマシだ」

事実、平壌ではなく、あえて平壌郊外の平城(ピョンソン)や順川(スンチョン)に住居を移す住民もいる。統制が厳しく、商売しづらい上に、運悪く取り締まりに引っかかれば山奥に追放されるおそれがあるからだ。

平城から平壌地下鉄の「プルグンビョル(赤い星)駅」までは25キロ、バスで乗っても検問の時間を除けば所要時間は1時間に満たない。