北朝鮮において農村は、長らく「負の象徴」だった。権力闘争に敗れ、或いはちょっとしたミスが重大事として断罪され、平壌にいられなくなった人々が追いやられてくる。およそ「文明」とはかけ離れた暮らしを強いられる「化外の地」なのだ。
ところが市場経済の発展で農村も変わりつつあり、ついには北朝鮮の社会主義体制の中で「敵対階層」に区分されてきた「富農」までが、新たに登場するようになった。
イチゴのために「寝ずの番」
平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、冬場にビニールハウスで野菜や果物を栽培、平壌のニューリッチ――トンジュ(金主、新興富裕層)に売って、大儲けしている農民の話を伝えてきた。