北朝鮮当局が、個人所有のオートバイに規制をかけている。デイリーNKの内部情報筋によると、違反すれば車両は没収され、農場に送られるという。バイク規制の背景に何があるのか。北朝鮮最新「オートバイ事情」に迫る。

中国製バイクで鴨緑江沿いを疾走する北朝鮮の男性
中国製バイクで鴨緑江沿いを疾走する北朝鮮の男性/2007年撮影:デイリーNK

爆走する北朝鮮のバイカーたち

平安南道(ピョンアンナムド)の内部消息筋は、次のように語る。

「ちょっと前までよく見かけた個人所有のバイクに対して北朝鮮当局が規制をしている。そのせいで最近すっかり見かけなくなった。元帥様(金正恩氏)が『走っているオートバイを見つければ即没収せよ』と指示したようだ」

北朝鮮で、バイクの個人所有が許可されたのは2012年だ。これを機に日本製バイクや中国製バイクが、中国企業を通じて輸入されはじめた。

当初、バイクは自転車のような通勤手段だった。そのうち荷物を運搬したり、人を乗せる、いわゆる輪タクとして活用されはじめ、商売道の一つになった。自動車よりも、手っ取り早い交通手段、運搬手段としてバイクは急増したが、同時に交通事故も増えた。女性たちが乗ることが多く、人身事故が多発したことが、今回の「オートバイ規制」の理由だが、それだけではない。

実は、バイクの騒音に対して、住民達のクレームが続出しているというのだ。一体、どういうことか。

日本製バイクは富の象徴

北朝鮮で最も人気が高いのは「日本製バイク」だ。

「デザインが格好いい」という理由で、ヤマハ、スズキ、ホンダなどの高価な日本製バイクは「富の象徴」だった。中国製より燃費が悪くても、新興富裕層のトンジュ(金主)がこぞって購入したという。

さらに、トンジュの子弟たちが、自分たちを誇示するためにバイクに乗り始めた。彼らは、昼夜問わず騒音をまき散らして町中や村中を爆走。一般住民たちからクレームが出るほどだった。まさに、北朝鮮版「暴走族」と言えよう。

既に、平壌市をはじめとする主要都市では、栄誉軍人に許可された荷物を運ぶ3輪バイクや一部特定機関の業務用を除き、個人が乗るバイクは、見かけなくなったという。そして、没収されたバイクは「協同農場に送られた」と情報筋は語る。

消えゆくバイカーに嘆く乙女たち

「協同農場に送られたバイクは稲運び用として改造されたり、農場幹部が乗る。しかし、ガソリン代もかかるので使い物にならない」

今回のオートバイ規制をめぐっては、大多数の住民たちが評価しているが、内部情報筋は「若い女性たちは残念がっている」と語る。

「北朝鮮では自家用車が許可されていない。それにもかかわらず、数百万ウォンもするバイクに乗って、カッコ良く疾走するバイク乗りの青年たちが見られなくなって、乙女たちも寂しがっている」

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