北朝鮮当局が、来年5月に予定している朝鮮労働党第7回大会の開催資金を集めるために外貨稼ぎに奔走している。そのために、まず目をつけたのは地方都市だ。

現在レジャー施設が建設されている順川市内の土地。隣の青い屋根は縫製工場とピザ屋だ。(画像:Google Earth)
現在レジャー施設が建設されている順川市内の土地(赤い丸)。隣の青い屋根は縫製工場とピザ屋だ。(画像:Google Earth)

トンジュのタンス預金を狙え!

相対的に豊かと言われている平壌に比べて、地方都市の町の様子は、やはり発展が遅れている。やはり貧しい。だからと言って、金持ちがいないわけではない。それはトンジュ(金主、新興富裕層)だ。

地方都市にトンジュが金を使う施設を作って、トンジュの「外貨タンス預金」を使わせて、国庫に入れようと言うのが当局の考えだ。詳細を現地のデイリーNK情報筋が伝えてくれた。

今回「外貨タンス預金」からの外貨稼ぎの舞台となったのは、平安南道(ピョンアンナムド)順川(スンチョン)市。平壌から北東に50キロ離れた人口20万あまりの中都市だ。しかし、順川はただの中都市ではない。

リッチな町「順川市」

市場に経済の主導権を奪われようとしていた90年代中頃、金正日氏は国主導の計画経済システムに戻すべく、平壌のすぐ隣、平城(ピョンソン)にあった巨大な卸売市場を閉鎖させている。そこで商売をしていた商人たちがやってきたのが、この順川だ。

その後、平城の物流機能は回復したが、順川ももう一つの物流の拠点として機能し続けている。鉄道と道路が東海岸の都市や北部山間地域とつながっている上に、大同江も流れており、物資の集散地としては最適な場所だからだ。さらに順川は、単なる物流の拠点だけではなく、周囲には炭鉱もある「リッチな街」だ。

この順川の大同江沿いの土地に、労働党財政経理部傘下の「綾羅(ルンラ)88貿易会社」が資金を投資して、スポーツ、娯楽、レジャー施設の建設が始まったのが昨年6月のことだ。建物はほぼ完成段階にある。

いわくつきの土地

この施設は表向き一般住民や子どもたちのための施設を装っている。実際、ローラースケート場やプールなどが建設されているが、実際は按摩院、サウナ、カラオケ、コーヒーショップなどトンジュをターゲットにしたデラックスな施設だという。大同江沿いで眺めがよく、大通り沿いで周囲に市場もあることから、集客にはもってこいの一等地だ。

この施設の実質的な運営者は、綾羅88会社順川支社を営んでいる男性だという。この男性は今までも、レジャー施設の土地のすぐ隣でピザ屋や輸出用の服を作る工場を営み、巨額の資金を労働党に上納してきた。また、周りの土地を駐車場として貸し出すなど、手広く事業を進めている。

周囲には順川市総合市場、カンポ総合市場、ヨンポ総合市場の3つの市場があり、輸出用の石炭を積んだトラックが常に出入りしている。また、自動車やガラスを扱うトンジュの店が立ち並ぶ一等地だ。

ところが、この土地はいわくつきの土地だった。

元々、支社の敷地を所有していたのはパク・キウォンという男性だ。

彼は、国家物資窃盗罪で逮捕され、价川(ケチョン)強化所での10年の刑に服した。出所後はクムチョンガン貿易会社を興し、石材工芸品事業に進出して大成功を収めた。土台(出身成分)の悪いにもかかわらず、外貨稼ぎ会社の社長の座まで登りつめた立志伝的な人物だ。

彼はレジャー施設に目をつけて、2003年大同江沿いに「総合奉仕所」を作った。サウナ、理髪店、按摩院などを兼ね備えたこの施設では売春が行われており、電力難の中でもこの施設だけは明るく照明を照らし続けていた。

ところが、彼が経営していた鋼鉄工場の中にあった大型変圧器が分解されたことが明らかになった。この施設は金日成氏が現地指導を行ったところだが、故障して使えなくなったとして、変圧器を売り払って運転資金にしたのだ。

金日成氏の現地指導の業績を無断で毀損することは重大な罪だ。彼の程の財力があればカネの力でもみ消すこともできたのかもしれないが、ちょうど金正恩氏が後継者として取り沙汰されるようになった敏感な時期だったことが彼に不利に働いた。パク社長に対して、金正日氏は「首領様の革命業績を毀損した階級の敵」だと「3代に渡って皆殺しにせよ」との指示を下した。そして、競技場で公開処刑された。

現在、この土地を所有している「綾羅88貿易会社」とパク社長の「クムチョンガン貿易会社」との関係は定かではない。

ただ、同じ場所に同じレジャー施設を建設していることを考えると、現在の社長がパク社長から何らかの影響を受けた人物であるかもしれない。あるいは、「綾羅88貿易会社」が労働党の傘下の企業であることを考えると、単に国が個人の命とノウハウと奪っただけかもしれない。

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