北朝鮮から海外に派遣された駐在員が忽然と姿を消す事件が相次ぎ、各国の北朝鮮大使館には緊張が走っていると米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

中国の対北朝鮮情報筋によると、今年9月にドイツと北京に駐在していた北朝鮮出身の家族が忽然と姿を消した。

こうした事態に、国家安全保衛部(秘密警察)が各国駐在の大使館に対して「監視を強化せよ」との指示を下す。各国駐在の大使館、領事館、貿易代表部の保衛員は、貿易駐在員や派遣労働者を徹底した監視下に置いているという。

増える下級幹部の亡命

しかし、情報筋は失踪した人が外交官なのか、貿易関係者なのかは明らかにしていない。また、失踪した家族が韓国や第三国に亡命したという情報も今のところはないが、事件性はないと思われるため、おそらく亡命の準備過程にあるものと思われる。

90年代から2000年代初頭に脱北者が急増した当時は、生活苦から脱北する人が大半を占めていた。しかし最近は、それほど生活には困っていない下級幹部の亡命が相次いでいる。

韓国の国家情報院によると、北朝鮮の海外駐在者の亡命は、2013年は8人、2014人は18人、2015年は10月までに20人に達している。金正恩第1書記が政権に就いて以来、70人以上の高級幹部が粛清されたことが背景にあるようだ。強化される恐怖政治に恐れた下級幹部が相次いで亡命しているというわけだ。

さらに、朝鮮労働党創建70周年の記念行事に必要な資金を集めるために、貿易関係者や労働者を世界各国に派遣しながら外貨を稼ごうとしてるが、ノルマが達成できなかったり、違法行為を行ったために当局の処罰を逃れるために脱北している。

韓国人のような北朝鮮駐在員

ある外国人観光客は、昨年北朝鮮で見かけた貿易関係者の様子を次のように語った。

「平壌から中国の丹東に向かう列車内で、瀋陽駐在の北朝鮮貿易関係者の家族と出会った。仕事でしばらく平壌に帰っていたとのことだった。身なりもおしゃれで、言葉も北朝鮮の訛りが少なく、韓国人と見間違うほどだった」

「小学校低学年の娘はずっと押し黙っていたが、出国検査を終えて列車が国境の橋に差し掛かった時、急に『パパ、中国に帰ってきたよ!』と大はしゃぎし始めた。言葉は朝鮮語ではなく、中国語だった。その姿を見て、両親もニコニコしていた」

「子どもはインターナショナルスクールに通っているとのことだった。中国の自由で豊かな生活に慣れた子どもには、北朝鮮での数週間はさぞかし息の詰まるものだったのだろう」

「北朝鮮という体制が年端の行かない子どもにも暗い影を落としていることを目の当たりにして、複雑な心境になった。あの家族も今頃脱北しているかもしれない」

上級幹部は、常に粛清される環境に置かれ、下級幹部は隙あらば脱北しようとする。金正恩氏の恐怖政治が北朝鮮権力層の空洞化をもたらそうとしている。

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