高層マンションでは、地上から屋上に設置されたタンクまで水を上げてから、各階に供給する仕組みになっている。つまり、停電になれば断水してしまうのだ。もちろん、エレベーターも動かない。
水は近くの井戸や川まで汲みに行き、重いバケツを持って30階、40階まで延々と階段を登らなければならないのだ。今回の未来科学者通りの入居対象となった研究者は、中高年から高齢者が多い。高齢者にとって、高層階への「水汲み」はとてつもない苦行だ。
1980年代から90年代に完成した光復通り、統一通り、紋繍通りなどのニュータウンでも同様の事態が起き、冬には暖房の効く親戚の家に避難する人が相次いだというが、無理もない話だ。厳冬期の平壌は気温が零下20度を下回る日もあり、暖房のあるなしは場合によっては生死にも関わる問題だからだ。
価格下落が止まらず
そんな事情もあり、北朝鮮では高層階はあまり好まれない。「元々住んでいたオンドルの家なら、石炭さえあれば暖房ができる」と言って、引っ越しをためらうのも無理はない。