北朝鮮で薬物汚染が広がり、青少年の間でも覚せい剤が蔓延している。

医薬品が不足している北朝鮮で、覚せい剤をはじめとする薬物が「治療薬」のように使われており危険薬物という認識が低いことが蔓延する最大の理由だが、常用者の増加とともに首都・平壌(ピョンヤン)や咸興(ハムン)を中心に製造業者も増加。さらに、高級幹部までも覚せい剤を常用していると米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の消息筋は13日、RFAに次のように語った。

子どもにも覚せい剤の煙?

「朝鮮(注:北朝鮮)に、覚せい剤の製造業者が3千人以上いることは商人たちの間では公然の秘密だ。彼らが製造した覚せい剤は、北朝鮮内部だけでなく中国に輸出され、中国当局も頭を悩ませている」

この情報筋は、北朝鮮住民が覚醒剤を風邪予防のための万能薬と認識しており「脳卒中と心血管系疾患に効果が優れた最高の救急薬と思っている」と語る。さらに子どもにも効果があるという住民すらいるとのことだ。

「覚せい剤の煙にあたれば1年間は風邪をひかないと言われている。ある住民は、春と秋にインフルエンザ予防接種の代わりに子供たちに覚せい剤の煙をあたらせろと言うぐらいだ」(前述の情報筋)

こうしたなか、5月に粛清・処刑された玄永哲元人民武力相も「覚せい剤のやりすぎが原因で処刑された」という噂が、一部では流れているという。情報筋は「玄永哲氏は425訓練所の准将時代に、行事をうまくこなしたことが故金正日総書記の目に止まり、国防委員会615事業局長を経て、人民武力相まで昇進した。金正恩第1書記に不敬罪を犯す人物ではない」としながら、次のように指摘する。

張成沢氏にも薬物容疑

「5月頃、玄永哲氏は訪ロした直後に、大会に参加するなど多忙な日々を送っており、疲労を回復させるために覚せい剤を服用したことが粛清された理由だ。つまり、高級幹部の間の覚せい剤の蔓延、薬物乱用に警告を鳴らすためだった可能性がある」

2013 年に張成沢(チャン・ソンテク)氏が粛清された時、同年12月9日付の労働新聞は「張成沢は麻薬を服用していた」としている。張成沢氏が麻薬を常用していたのかは不明だが、高級幹部の間で蔓延する薬物汚染に対する警告だった可能性もある。

「北朝鮮の幹部たちは、脳卒中や心臓発作などの病気のおそれがあるので、非常薬として覚醒剤を数グラムずつ保有している。以前は熊胆(熊の胆:くまのい)や麝香(じゃこう)のような動物薬を保身用にもっていたが、今では覚せい剤や麻薬を持つ。玄永哲の処刑があってから『覚せい剤をやって眠くなったら銃殺される』というジョークもある」(咸鏡北道の情報筋)

こうした薬物汚染について、日本在住の脱北者の朴さん(女性:39才)も「朝鮮人(北朝鮮住民)が薬物に対する罪の意識がないのが一番大きな問題です。もし南北が統一されたら深刻な社会問題になるでしょう」とデイリーNKジャパンの取材に応えた。

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