ソウルの地下鉄の駅から姿を消しつつある駅周辺の地図。代わって登場したのがタッチパネル式の地図だ。単なる道案内に留まらず、観光案内やお得なクーポン発行など、様々な機能を持たせている。

平壌地下鉄の路線案内図(画像:NoordZuidlijn)
平壌地下鉄の路線案内図(画像:NoordZuidlijn)

一方、平壌の地下鉄の駅には地図すらない。あるのは、ボタンを押せば行き先の電球が付く路線案内図ぐらいだ。街なかでも地図は見かけない。売られている市内地図もかなりいいかげんな絵地図ばかりだが、保安上の理由があると言われている。そこで、登場した新手の商売が「人間ナビゲーター」だ。

「喜んでご案内します!」

平安南道(ピョンアンナムド)在住のデイリーNK内部情報筋が「人間ナビゲーター」の詳細について伝えてきた。

北朝鮮で「道奉仕業種」と呼ばれる「人間ナビゲーター」は、最近平壌、平城(ピョンソン)、順川(スンチョン)などの駅やバスターミナルに現れはじめた。1回1000~2000北朝鮮ウォン(約15円~20円)と格安の料金で客が求める場所まで案内する。

しかし、これだけでは商売が成り立たないことから宿泊斡旋業も同時に営む。夜間に駅やバスターミナルに到着した人に、旅館や民泊を紹介して案内する。こちらの料金は5000~2万北朝鮮ウォン(約75円~300円)でコメが1キロから4キロ買える額だ。

人間ナビゲーターは、単なる道案内をするだけではない。客を「喜んでご案内いたします!」と丁寧な言葉づかいで迎え、荷物を持つポーターの役割まで果たす。時には地図まで描いてくれるという。

彼らは相手の言葉遣いや服装を見て商人、保安員、裁判官、労働党幹部、軍人などを瞬時に見分けて料金を決める。なかには、ボーっとしている人や世間知らずに見える人に高額の料金をふっかける悪質なナビゲーターもいるとのことだ。

大都市で道も複雑な平壌ならともかく、たかだか人口20万人の平城や順川で「人間ナビゲーター」のような商売が成立する背景には、市場経済の拡大・発展による交流人口の増加があるようだ。

首都平壌は許可証なしでは入れないなど統制が厳しく商売するには様々な障壁がある。一方、平壌郊外の平城や順川は、商売や移動に関する統制が緩かったことから北朝鮮有数の卸売市場ができ、全国各地から商人が集まるようになった。

高速バスも運行し流通の一大拠点として発展し、他地方から訪れる商売人も増えた。その反面、両都市では商人が持つ多額の現金を狙った強盗が多発した。他地方から訪れた土地勘のない商人が夜道を歩くのは非常に危険なことからボディガードに加えてポーター、宿泊斡旋も兼ねた「人間ナビゲーター」という新手の商売が生まれたのだ。

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