そのきっかけは、過去の計画経済を完全に崩壊させた90年代末の大飢饉「苦難の行軍」だった。
この時期、労働党、人民軍、行政機関などがこぞって外貨稼ぎに乗り出した。通常、北朝鮮では国営企業に「◯◯工場」「△△企業所」という名称が付けられるのだが、外国人にはわかりづらい。そこで「XX貿易会社」という名前が使われ始め、その責任者を「社長」と呼ぶようになった。
「責任秘書」「支配人」という肩書に慣れていた北朝鮮の人々にとって「社長」という肩書は驚きを持って受け止められた。
社長という言葉は、「外国人とビジネスを行う人」「外国から金を儲けてくる人」という、党幹部や支配人を上回る意味合いが含まれるようになった。大量の餓死者が出ていた当時、中国から食糧を買い付け、人民を助け、国にも外貨を捧げる「社長」は尊敬と憧れの対象となる。
「出身成分」も関係なし
さらに「社長」という言葉には、それ以上の「ノースコリアン・ドリーム」が込められている。
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