北朝鮮で国営企業や国の機関に勤める人の平均月収はわずか5000ウォン(約75円)ほど。これではコメ1キロすら買えず、子どもの小遣いにもならない。

生きていくには市場で商売をしたり、立場を利用してワイロをせびったり不正を働いたりするしかない。

「儲かる産業に労働力を」

そんな北朝鮮で100万北朝鮮ウォン(約1万5000円)という破格の月給を受け取っている人々がいる。製鉄所や精鋼所の技術職、そして鉱山や軍需工場の労働者だ。 咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、茂山(ムサン)鉱山、金策製鉄所、城津精鋼所で溶解、掘削、削岩などきつい仕事にあたっている人々の月給は100万北朝鮮ウォンに達している。

ただし、この額は生産ノルマを達成した場合に限って支給されるという条件付きだ。茂山鉱山ではせっかく上がった給料が天引きで10分の1になってしまうという話もあったが、それが解消したのかについて情報筋は触れていない。

事務職に不公平感

今回の賃上げで「市場の零細商人より儲からない」との不満が多少なりとも解消された形だ。100万北朝鮮ウォンは4人家族が食べていけるほどの金額だ。

今回の賃上げの目的は「外貨稼ぎに役立つ産業に、優秀な労働者を市場から呼び戻す」ことにある。 近年の生産現場は、数千北朝鮮ウォンの月給ではとても食べていけないことから、技術者たちが市場での物売りで忙しい状態になってしまい、生産性の著しい低下が問題になっていた。今回の賃上げで、当局の狙い通り技術職が続々と市場から職場に戻りつつあると情報筋は伝えている。

一方、別の情報筋によると、同じ職場でも事務職などは月給10万北朝鮮ウォンから30万北朝鮮ウォン(約1500円~4500円)しかもらえず、不公平感や不満が高まっている。「労働強度を上げてもいいから、月給を上げてくれ」と抗議する人もいるという。

さらに、雑貨などを生産する工場も外貨稼ぎ会社の従業員の月給は相変わらず3000北朝鮮ウォンから5000北朝鮮ウォンしか受け取れない。特権的な地位にあり、給料外の収入が多い外貨稼ぎ会社の従業員はまだしも、一般的な工場の労働者の生活は相変わらずだ。

一般住民たちは「100万ウォンでも余裕のある暮らしができるわけではない。何らかの事情で製鉄所や鉱山の操業が止まれば給料はもらえなくなる。それだったら市場で商売していた方がマシだ」と言っているという。

庶民が破格の給料を羨ましがらない背景には、鉱山などは労災事故が多く、いつ怪我をして働けなくなるかもしれないという事情もある。

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