秋も深まろうとしているこの時期、朝鮮半島の伝統行事と言えば「キムジャン」だ。南北問わず、来年春までの越冬用の大量のキムチを漬けるだけあり、家族だけでは人手が足りず近所の人々も駆けつけて大々的に行われる。

道端でキムチを売る女性たち©Roman Harak
道端でキムチを売る女性たち(画像:Roman Harak)

韓国ではキムチ冷蔵庫やスーパーでの出来合いキムチが広まったため、以前ほど重要視されなくなったキムジャン。食料の少ない北朝鮮では今でも極めて重要だ。この時期に越冬用の食糧を確保できなければ、一家の命に関わる。北朝鮮ではキムジャン戦闘、すなわち「キムチ漬け込み戦闘」と言われるが、まさにその名にふさわしい行事だ。

キムジャンは、最低気温が0度以下の時期が最適という。ソウルでは11月下旬、韓国南部では12月に入る頃だ。一方、北朝鮮北部の高原地帯にある両江道(リャンガンド)や慈江道(チャガンド)は、はやくもキムチ漬け込み戦闘の季節が到来した。

今時の韓国では3人家族の場合、白菜を20玉、重量にすると約40キロから60キロほどのキムチ漬けるぐらいだが、ある脱北者によると「北朝鮮の両江道に住んでいた我が家では、白菜350キロ、キャベツ100キロ、大根150キロのキムチを漬け、ニンニク、ネギ、キュウリの漬物を別に漬けていた」と語った。

工場、企業所から野菜の配給もあるが、この脱北者によると「350キロまるまる配給される年もあれば、30キロしか配給されない年もあった」という。そもそも、配給など期待していない北朝鮮の人々は「個人耕作地」で野菜を栽培、または市場で購入して、越冬用の食糧を確保する。

配給が多くて白菜が余った場合には、質の悪いものから家畜の餌にする。個人耕作地で白菜が豊作となれば、余ったものを市場で売って儲けにする。

以前の韓国では、会社から「キムジャンボーナス」が支給されるほど、金も労力もかかるキムジャンだが、北朝鮮でも同じようだ。

白菜250キロ、大根150キロ、キャベツ100キロ、塩15キロ、ニンニク2.5キロ、トウガラシ粉2キロを恵山の市場で買った場合、112万北朝鮮ウォン(約1万6800円)ほどかかる。そこにタラやジジャコを入れるとなるとさらにかかる。

多少値は張るが「来年春までの半年間食べ続けるキムチだから」と奮発する住民も多い。

各地の農場では、キムチ漬け込み戦闘が終わってはじめて、一年の仕事が概ね終わったと実感する。そして、農民たちはのんびりと冬を迎えるのだ。

しかし、8月に水害に襲われ甚大な被害を被った咸鏡北道(ハムギョンブクト)の羅先(ラソン)では、野菜の値段が高騰し、住民たちは「冬をどう乗り切ればいいのか」と弱り切っているという。

    関連記事