北朝鮮北部山間部の冬の訪れは早い。10月中旬になれば、朝の気温は氷点下まで落ちる。両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)の市場にも、様々な越冬用品が並び始めた。

薪を荷車に載せて運ぶ北朝鮮の人(画像:TGBUS.com)
薪を荷車に載せて運ぶ北朝鮮の人(画像:TGBUS.com)

今、市場で最もよく売れているのは「薪」だ。普天(ポチョン)郡や白岩(ペガム)郡の住民は、夏のうちに山奥に入って木を切り、それを乾燥させておく。そして、この時期になれば運びだして市場で売りに出すのだ。

現在の薪の相場は、1立米で18万5000ウォン(約2775円)ほどだ。夏には16万ウォン(約2400円)だったが、需要が増えるにつれ価格は上がる。薪の卸売業者は、車で普天や白岩まで行って、安く直接買い付けてくる。業者目当てに道沿いでは多くの人が薪を売る。

しかし、金正恩第1書記は、森林保護をスローガンにしている。薪に最適なブナ、カラマツは保護樹木に指定され、簡単に伐採できなくなった。当局も山林保護員を投入して取り締まりを強化しており、見つかれば厄介なことになる。

以前は、普天や白岩から薪を満載したトラックが恵山に向かう光景が見られたが、最近では取り締まりを避けるために夜中の移動を余儀なくされている。ヤナギやドロヤナギなど保護対象となっていない木を切る住民も多いが、「取り締まる品物がなくなったからって、何もこんなものまで取り締まらなくても…」と不満の声が上がっている。

平壌など平地では燃料に石炭や練炭を使うことが一般化しているが、両江道の人々は薪にこだわる。石炭や練炭がないわけではない。恵山の郊外には、無煙炭を産出する大規模な炭鉱もある。それでも両江道で薪が好まれるのは、ある理由がある。

薪は石炭より灰が少ないため、かまど掃除も少なくて済み、手や部屋が汚れることもない。火力が強く、煮炊きにも暖房にも便利だ。何よりも石炭に比べて安価であることが、薪が好まれる理由だ。

一般家庭が、春までに使う薪の量は2.5立米になる。今の価格で計算すると46万2500ウォン(約6940円)で済む。一方、石炭なら2トンを使うことになるが、その値段は60万ウォン(約9000円)にもなる。その価格差はコメ22キロ分にもなる。

計画経済が機能していた時代なら、石炭や練炭を配給して、薪の使用を統制できたかもしれないが、市場経済化が浸透している現在の北朝鮮では難しいだろう。

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