石炭や練炭がないわけではない。恵山の郊外には、無煙炭を産出する大規模な炭鉱もある。それでも両江道で薪が好まれるのは、ある理由がある。
薪は石炭より灰が少ないため、かまど掃除も少なくて済み、手や部屋が汚れることもない。火力が強く、煮炊きにも暖房にも便利だ。何よりも石炭に比べて安価であることが、薪が好まれる理由だ。
一般家庭が、春までに使う薪の量は2.5立米になる。今の価格で計算すると46万2500ウォン(約6940円)で済む。一方、石炭なら2トンを使うことになるが、その値段は60万ウォン(約9000円)にもなる。その価格差はコメ22キロ分にもなる。
計画経済が機能していた時代なら、石炭や練炭を配給して、薪の使用を統制できたかもしれないが、市場経済化が浸透している現在の北朝鮮では難しいだろう。