今年8月、北朝鮮東海岸の羅先(ラソン)経済特区は水害で大きな被害を受けた。金正恩第1書記は「被災者のために市内先鋒(ソンボン)地区の白鶴洞(ペッカクトン)に1300棟の住宅を建設せよ」との指示を出し、今月初めに住宅は完成。金正恩氏も現地に訪れて入居式が行われた。

20150918労働新聞金正恩羅先訪問
9月18日に被災地を訪れた金正恩氏

テントで避難生活を強いられていた被災者たちは、「テレビなどの家具や、かまどまで完備された家をタダでもらえるなんて」と喜んでいたが、その喜びも束の間。今では「家のことで頭が痛い」と複雑な表情を見せている。一体、何が起きているのか。

「暖かい配慮」の住宅は修理もできない

金正恩氏は今月8日、白鶴洞の災害復旧住宅に現地指導に訪れた。この日程に合わせるため、復旧住宅は北朝鮮でいうところの「速度戦」、すなわち突貫工事で建設されたが、「実際は、手抜き工事でとても住めるレベルではない」と、現地情報筋が明かした。

「家の壁は剥がれ、床もデコボコ。この地域(羅先)は、冬になると海からの風が吹き付けるため、壁を厚くするのが一般的だが、それも薄い。レンガが完全に乾くまでに上からセメントで塗り固めたため、気温の低下でレンガが割れるかもしれない」(現地情報筋)

さらに、住民を悩ましているのが、修理をしようにも大っぴらにはできないことだ。「元帥様(金正恩氏)の温かいご配慮」で建てられた住宅を下手に修理すれば、「最高指導者に歯向かう恩知らず」として政治犯扱いされかねない。また、家の売買が一般的になっている北朝鮮では、こうした「いわくつきの家」はとても売りに出せない。

困惑する住民たちをよそに、金正恩氏は「幸福の創造者としての自負を胸一杯に感じる」とご満悦の様子だが、「元帥様(金正恩氏)の暖かい配慮」による住宅は「使えない」わけだ。

今回のケースだけでなく「速度戦」が、手抜き工事や労災事故を招く事態は、昔から繰り返されてきた。先日、デイリーNKジャパンで紹介した「500人以上が死亡した平壌開城高速道路の橋崩落事故」などはその典型といえよう。この事故から、30年近く経とうとしているが「安全無視、工期優先」の無茶なやり方は何一つ変わっていない。

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