北朝鮮の東海岸では、初夏から秋にかけてがイカ漁の最盛期だ。イカを満載した漁船が入るたびに仲買人や加工業者が港に集まり、さながら「イカラッシュ」の様相を呈するが、東海岸の清津(チョンジン)の港の様子に異変が起きている。

北朝鮮の漁船(資料写真)
北朝鮮の漁船(資料写真)

異変の理由は、北朝鮮当局が小型漁船の操業を一切禁止し、人民軍の水産基地、外貨稼ぎ機関、中国の水産会社に漁業権を与えたからだ。現地の状況を米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。 咸鏡北道(ハムギョンブクト)の内部情報筋によると、今年7月に清津(チョンジン)市のセナル水産事業所の漁船が、韓国の鬱陵島付近で沈没する事故を起こし、乗組員が韓国の海洋警察に救助された。乗組員5人のうち3人が韓国への亡命を申し出た。

この事件の余波で、当局は小型漁船の出漁を完全に禁止。小型漁船は表向きは軍や政府機関の所属だが、内実は個人所有が多く漁に出られない漁業従事者の生活を直撃している。東海岸の漁民の収入の7割がイカ漁から得ているからだ。

現在、漁に出られるのは保衛指導員の同乗が可能な20人乗り以上の漁船に限られている。漁船は羅先(ラソン)市の大興貿易会社に所属している。

また、現地の別の情報筋によると「東海岸の漁業権を中国の会社にすべて売り払った。夜の海でライトを灯してイカ漁をしているのはすべて中国漁船だ」とのことだ。

これから「ハタハタ漁」の季節が到来するが、労働党創建70周年記念日に関連して各種統制が強化されていることもあり、漁民の間では「ハタハタ漁もできなくなるのでは」と、不安が広がっている。

RFAの情報筋は「朝鮮の海なのに、中国漁船しか漁を許されないなんてありえない。漁民たちは『第二の苦難の行軍』が待ち構えている」と怒りを露わにした。

自宅に個人耕作地を持つ漁民は、収穫した野菜でなんとか食いつなぐことができるが、それすらもない場合は完全に生活が行き詰まっている。北朝鮮当局の理不尽な漁業規制は、今にはじまったことではないが、零細漁民は、他の地方の鉱山に出稼ぎに行ったり、市場で商売するなど、漁業から身を引かざるを得ない状況だ。

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