北朝鮮の国民にとって故金日成主席は、キリスト教やイスラム教などの一神教における「全能の神」のような存在だった。50年代後半以降進められた「偶像化教育」のみならず、「全人民の父なる首領」としてセルフプロデュースを怠らなかった金日成氏だったからこそ成し得たと言える。付け加えるなら、神格化のためには無慈悲な粛清すら厭わなかった。
祖父に比べると、孫の金正恩第1書記は「ない」ことだらけだ。帝王学を受けられなかったために「学がない」。突然の父の死で突如最高指導者となったため「経験がない」。また、生い立ちにまつわる「伝説もない」