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北朝鮮の国民にとって故金日成主席は、キリスト教やイスラム教などの一神教における「全能の神」のような存在だった。50年代後半以降進められた「偶像化教育」のみならず、「全人民の父なる首領」としてセルフプロデュースを怠らなかった金日成氏だったからこそ成し得たと言える。付け加えるなら、神格化のためには無慈悲な粛清すら厭わなかった。

昨年4月に朝鮮中央テレビが放送したモランボン楽団のライブの時に流された、金正恩氏は子どもの時から飛行機を操縦していたという映像(画面:朝鮮中央テレビキャプチャー)
昨年4月に朝鮮中央テレビが放送したモランボン楽団のライブの時に流された、金正恩氏は子どもの時から飛行機を操縦していたという映像。このようなプロパガンダは若者たちの嘲笑の的となっている。(画面:朝鮮中央テレビキャプチャー)

祖父に比べると、孫の金正恩第1書記は「ない」ことだらけだ。帝王学を受けられなかったために「学がない」。突然の父の死で突如最高指導者となったため「経験がない」。また、生い立ちにまつわる「伝説もない」