朝鮮半島に伝わる「秋夕の祭祀」は、各家庭や一族にとって年間の最大行事だ。供え物も女性が作ることが慣例だったが、最近の北朝鮮では、市場で購入した料理、いわば「出来合い」の供え物で済ませるケースが増えている。

韓国での秋夕の祭壇の様子(画像:Jens-Olaf Walter)
韓国での秋夕の祭壇の様子(画像:Jens-Olaf Walter)

秋夕に限らず、祭祀(チェサ)は南北朝鮮半島や在日コリアンの間では大きな負担となる行事だ。女性、とりわけ家庭の主婦は、夫の実家で舅姑や親戚と顔を合わせる精神的苦痛に加えて、祭壇に供える山のような料理を作る「重労働」をこなさなければならない。

「祖先を大切にする」という大義名分があるために、女性たちからは風習自体に異を唱えることもままならない。もちろん、こうした伝統行事を意気揚々とこなす女性も存在するが、北朝鮮ではかなり様子が違ってきているようだ。

平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、「この時期、市場は早朝から店を開く。墓参り用品やスルメ、落花生、スンデ(腸詰め)、果物など祭壇に供える様々な食物が店頭に並ぶ。家で用意するのはサンジョク(肉や野菜の串焼き)ぐらいだ」と語った。

祭祀では、本来は故人の好物を家で用意するのがしきたりだったが、女性たちから、「市場の商売で忙しいのに、なんで秋夕にまで重労働をしなければならないのか?!」と不満の声が高まり、出来合い物で済ませるようになった。背景には、女性の経済力と発言力が高まったことがある。

最近の流行は、昼食はお墓の前で焼き肉を食べ、夕食は戻って来て屋台で食べて、ついでに一杯やるというのが、北朝鮮式「秋夕祭祀」スタイルだ。これなら女性たちの負担も減り、さほど面倒とは思わないだろう。

北朝鮮当局は、「太陽節(金日成氏の誕生日)」「光明星節(金正日氏の誕生日)」「党や軍の記念日」などの行事を住民に強制するが、住民達は、別の違う形で秋夕を盛大に祝いながら、ささやかな楽しい時を過ごすようだ。

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