北朝鮮当局が、住民の間で「効果がある」と好評だった「シラミ取り石鹸」の使用を全面禁止したと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。理由は、石鹸に人体に有害な中国製の殺虫剤が入っているからだという。

北朝鮮の学校、軍隊、建設現場などでは、シラミや南京虫(トコジラミ)の発生が後を絶たない。中でも、服に付くコロモジラミや人の頭に付くアタマジラミにより、冬季を中心に発疹チフスが流行している。

これらの病気は、日本では太平洋戦争中に大流行したが、1957年を最後に発生は報告されていない。致死率は年齢によって異なるが、10%から40%に達する恐ろしい病気だ。

シラミに対抗するため、昨年末頃から、市場で「シラミ取り石鹸」が売られるようになった。石鹸の効果は抜群で、兵士、建設現場の突撃隊員、託児所、幼稚園などで大人気となった。ところが最近になって、この石鹸の使用が突然禁止された。

RFA咸鏡北道(ハムギョンブクト)の内部情報筋によると、道内の茂山(ムサン)をはじめ全国各地の人民班(町内会)の会議で、北朝鮮保険省から、「シラミ取り石鹸には、人体に有害な中国製殺虫剤が入っているため、一切使用を禁ずる」という緊急指示が伝えられ、愛用してきた住民たちは、驚愕しているという。

慈江道(チャガンド)の情報筋によると、このシラミ取り石鹸は、市場で1つ3000北朝鮮ウォン(約45円)と手頃な価格で売られ、軍人や突撃隊員のみならず、一般の人々も愛用してきた。

しかし、実際に使用してみるとシラミなどには効果があるが、軍人や突撃隊員の間で原因不明の皮膚病が発生するようになった。皮膚病には、シントミチン(クロラムフェニコールの光学異性体、ロシアで多く使われる)やマイシンなどの抗生物質もあまり効かない。さらに、被害は子どもたちにも及んだ。

5月初頭、北朝鮮全土で7歳未満の子どもたちの間で皮膚病が流行した。子どもたちのなかには、高熱で免疫が落ちたために結核にかかり、死亡する事例も発生。事態を重く見た北朝鮮保健当局が、緊急調査を行ったところ、原因不明の皮膚病、めまいの原因が「シラミ取り石鹸」の使用にあると見て、使用禁止令が下された。

取り締まりには、人民保安部(警察)も乗りだし、市場で「シラミ取り石鹸」を没収し、販売した者を逮捕、流通させた者の追跡をしている。逮捕された商人は、中国人民元で3000元(約5万6000円)もの高額の罰金を支払わされたことから、「自分たちも被害者」だと訴えているという。

RFAの情報筋は、石鹸の出処や製造糧について明らかにしていないが、石鹸は中国製ではなく、中国から輸入した殺虫剤を使って「民間石鹸製造業者」が作ったと見られる。

ここ最近、日韓だけでなく中国でも「食の安全」を守るため「製造者責任」などが厳しく問われるが、北朝鮮では、明確な安全基準がなく、審査もされないため、こうした事故が多発したと見られる。

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