北朝鮮では、個人所有の車、すなわち「マイカー」は認められない。しかし、トンジュ(金主、新興富裕層)や幹部らは、工場、企業所などの機関名義で登録しながら、運送営業用の車やマイカーを所有している。

自動車産業の発達は、様々な派生ビジネスを生み出すが、北朝鮮でも「マイカー族」をターゲットにした新手の商売が登場しているとデイリーNKの平安北道(ピョンアンブクト)の内部情報筋が伝えてきた。その新手の自動車ビジネスとは「洗車場」。

北朝鮮では、90年代まで洗車場は存在しなかった。運転手たちは、川から水を汲み上げて車を洗っていたが、2010年頃から平城(ピョンソン)、順川(スンチョン)、新義州(シニジュ)などの地方都市を中心に、外貨稼ぎ会社が運営する「新しいスタイルの洗車場」が登場しはじめる。

これらの洗車場は、スピードが速い外国製の「洗車機」を導入。さらにガソリンスタンドや食堂、商店まで併設されている。洗車を待つ客をターゲットに、休憩スペースや食事を提供して客を囲い込むーー資本主義国家ではごく当たり前の風景だが、北朝鮮でも総合サービスを提供して利益を上げるという概念が浸透しているようだ。

「洗車場ビジネス」は、当初は外貨稼ぎ会社の独占状態だったが、マイカーだけでなく、自動車自体の増加傾向を敏感に察知したトンジュたちが、「洗車場ビジネスは儲かる!」と次々に参入しはじめた。

しかし、単なる洗車場だけでは、外貨稼ぎ会社が運営する既存の洗車場には太刀打ち出来ない。そこで、後発組はきめ細やかなサービスで差別化を図りながら、目玉サービスを導入しはじめた。そのサービスとは20代の美女による洗車だ。

洗車美女は、川や湖に設置された揚水機で汲み上げた水で丁寧に洗車しながら、車内もきれいに磨く。機械洗車より時間はかかるが、美女たちのきめ細やかな手洗いで大切な車がピカピカになることから、人気は上々だ。

それだけではない。洗車美女たちに流行の可愛い服を着せたり、道路で客引きをさせるなど、ありとあらゆるサービスで客を引きこもうとしている。ここまで来ると、日本のガソリンスタンドも顔負けだ。

ちなみに洗車料金は、どこでも乗用車は3万北朝鮮ウォン(約450円)でトラックやバスは5万北朝鮮ウォン(約750円)だ。北朝鮮では、今現在も、自動車は増加傾向にある。洗車美女サービスは当局の規制を受けないこともあって、今度も拡大していきそうだ。

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