海で遭難して死亡した男児、アイラン・クルディ(3)君の衝撃的な写真が報じられたのをきっかけに、世界の注目を集めているシリアの難民問題。その最も大きな責任を負うべき同国のバッシャール・アサド大統領の50歳の誕生日(9月11日)を、熱烈に祝っている人物がいる。

北朝鮮の最高指導者、金正恩第1書記だ。

金正恩氏は8日、アサド氏に祝電を送り、その全文を朝鮮中央通信と労働新聞が報じた。正恩氏が外国の首脳の誕生日に祝電を送り、その事実が公開されるのは異例だ。ここ2年間では他に、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長、ラオスのチュンマリ・サイニャソーン国家主席の2人しかいない。

「テロとの戦い」支援に感謝

中でも、正恩氏とアサド氏の親密さは格別である。

アサド氏もまた、折に触れて金正恩氏に祝電を送っている。北朝鮮は、正恩氏の誕生日に際する外国首脳との祝電のやり取りを公開していないが、アサド氏は毎年、故金日成主席や故金正日総書記の誕生日に正恩氏宛てのメッセージを送っており、本人の誕生日に祝電を送っていることも、まず間違いないだろう。

では、正恩氏とアサド氏は、どのようなメッセージを交換しているのか。

正恩氏は今回の祝電で、アサド氏の「正しい指導」を激賞。その指導のおかげでシリア国民が、「あらゆる試練と難関」に打ち勝っていると述べている。

もしかしたら正恩氏は、アイラン君の死に最も心を動かされない人物なのかもしれない。

一方、アサド氏は北朝鮮の外務省代表団と面会した際、「テロとの戦いにおけるシリアへの支援」に対して感謝の意を表したという。

北朝鮮とシリアの軍事的なつながりは深い。4月には、北朝鮮の朝鮮人民軍の軍人と推測される人物がシリア政府寄りの民兵隊員として活動中に反政府軍の捕虜となったと、聯合ニュースなど韓国の各メディアが報じている。

また、金日成主席は第4次中東戦争の際、エジプトとシリアに朝鮮人民軍の戦闘機パイロットを派兵。イスラエル空軍と死闘を演じさせた歴史もある。

加えて言うなら、ロシアが最近、アサド政権に加勢してシリア内戦に軍事介入している事実が浮上している。プーチン政権のそうした姿勢は、北朝鮮に対するロシアの接近にも共通する。

北朝鮮とシリアの関係を注視していきたい。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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