北朝鮮の国営工場、企業所が「私金融業者」、すなわち「ヤミ金」から運転資金を調達している。独立採算制の導入で、国から企業所への資金調達が途絶えているからだ。

北朝鮮版「ヤミ金」事情について、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

国営企業とヤミ金

これまで、ヤミ金業者から運転資金を調達するのは主にトンジュ(金主、新興富裕層)だった。しかし、民間人であるトンジュの場合、知人の紹介や一定規模の貿易業、卸売業を営んでいることを証明する当局の許可証がなければ融資を受けるのは難しい。

一方、国営工場、企業所の場合は設備を担保に融資を受けることが可能だ。手っ取り早く運営資金を調達するため、ヤミ金融に手を出すようになった。

北朝鮮では、民間の金融業は違法行為であり、かつて国営企業はこの制度を利用して、ヤミ金業者から融資を受けた上で、業者を「高利貸罪」で訴えて踏み倒すことが多かった。しかし、独立採算制導入後は、運転資金の安定的な調達が必要なため、きちんと返してまた借りるようになっていることもヤミ金市場が活性化している要因と言える。

事実上の金融マーケットが築かれるなか、保安署(警察署)も金融業を取り締まらない。問題が起きた場合には「話し合って解決しろ」――つまり示談で解決しろと言うだけだ。

北朝鮮版ヤミ金の回収方法

国営企業がヤミ金業者から融資を受けた場合、借用書には「期日までに返済がない場合には、元金と利子に相当する額の工場の建物と設備を利用させること」と書かれており、返済ができなかった場合には設備が差し押さえられる。

そして、ヤミ金業者は回収した設備を使って靴などの日用品や人造肉(ソイミート)を生産する。本来、設備は国有財産だが、移動や売却さえしなければいくらでも抜け道がある。

一方、トンジュは土地や住宅などの不動産を担保に融資を受ける。返済が滞ると厳しく取り立てられ、返済不能になれば担保物件は回収され、売り払って現金化される。

ヤミ金業者は、かつては民間人が細々と営んでいたが、時間が経つに連れて拡大し、暴力団と結託するようになった。力をつけた彼らは保安署も手出しできない。もちろん、多額のワイロを保安署に払っていることは言うまでもない。

元金や返済期間によって異なるが、おおよそ10%ほどだという。利子は毎月末、または3ヶ月に1度払う形になっている。

「保証人」制度も登場

至急、カネが必要になった場合には「ドンジプ」(カネ屋)と呼ばれるヤミ金業者を利用する。こちらの方は、一般的なヤミ金より利子が高く50~60%だ。商人から外貨稼ぎ企業所の社長、国営工場の支配人まで利用者は多い。北朝鮮ウォンは扱わず、米ドル、人民元、日本円で取引を行う。

ドンジプでカネを借りるには担保ではなく、それなりの社会的地位を持った保証人が必要となる。一見さんが訪ねて行っても玄関先で追い返されてしまう。自力で保証人を見つけられない人のために、保証人を紹介して紹介料を取るブローカーも存在する。

北朝鮮でヤミ金融が横行するのは、銀行が役割を全く果たしていないためだ。

北朝鮮には「朝鮮中央銀行」「朝鮮貿易銀行」など23以上の銀行が存在する。朝鮮中央銀行は中央銀行業務に加えて貯蓄などの一般金融機能を担い、朝鮮貿易銀行は外貨関連の業務を行っている。これ以外にも政府、労働党、人民軍の傘下に様々な銀行が存在する。

朝鮮中央銀行におカネを預けると年3%の利子が付く。抽選でさらに高い利子が得られる金融商品もあるが、そもそも銀行におカネを預ける習慣がない上に、2009年の貨幣改革(デノミ)の際に強制的に現金を預けさせられたこともあり、北朝鮮の人々の銀行に対する信頼度は極めて低い。

また、朝鮮貿易銀行に外貨預金すると、引き出す際には1ドル=100北朝鮮ウォンの公式レートが適用されるが、闇レートの50分の1だ。結局、誰も預金しないため、一度市場に流通した外貨が銀行に戻ることは皆無だ。

民間が主導する北朝鮮の市場経済において、ヤミ金融はもはや不可欠とといえる。

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