北朝鮮当局は、全国緑化事業を進めているが、今年の夏、各地方に草の苗を配布した。しかし、この草が畑を荒廃化させ、食糧難を引き起こしかねない「ジモシ」だったと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

両江道の情報筋は「中央から大量のジモシが送られてきた。『試験的に植えよ』と指示が下されたが、現場では農場員も幹部もあ然としている」と語った。実は、ジモシは、畑でよく育ち、40センチ以上深く根を張ってトラクターでも耕せなくしてしまう厄介な草だった。仮に耕せても根が残り、また生えて来て、一般の除草剤でも歯が立たない。

90年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の時期、北朝鮮の多くの畑で「ジモシ」が生え、農作業に被害を及ぼし、食糧難がさらに悪化した。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の別の情報筋によると、「ジモシ」は、朝鮮戦争時に食糧難を解決するためにロシアから輸入された「えん麦」の袋に入りこんで、あっという間に北朝鮮全土に広がったという。

農耕地に甚大な被害を与えたこともあり、1960年代には全国的に「ジモシ撲滅運動」を行ったが、撲滅には至らなかった。それ以降も、毎年「ジモシに気をつけよう」と宣伝活動が行われてきた。

北朝鮮の人にとっては「やっかいな雑草」の「ジモシ」だが、実は世界中で使われている「ティフトン419」という芝生の一種だ。

ティフトン419は、米国の農業研究所での品種改良で生まれた。育ちが速く、渇水や塩分にもよく耐え、踏まれても復活が速いため、サッカー場、ラグビー場ななどのスポーツ施設から商業施設や個人住宅の庭まで様々なところで使われている。

日本の多くの自治体が行っている校庭・園庭芝生化事業でも、このティフトン419が推奨されているが、3日から6日間隔で、芝刈りをする必要があるなど、こまめな手入れが必要だ。手入れを怠ると、あっという間に雑草化する。

北朝鮮当局は、住民を動員してジモシの手入れを行わせようとしているようだが、農作業や商売で忙しい北朝鮮農民にとっては、面倒以外の何物でもない。

北朝鮮の緑化事業は、荒廃した山々に木を植えることで保水力を高め、洪水被害を減らす目的で始まった。しかし、そうした本来の目的とはかけ離れて、全く役に立たず、厄介極まりない芝生を各地方に送りつけていることからしても、迷走ぶりがうかがい知れる。

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