中国で行われているサッカーEAFF東アジアカップ2015で、北朝鮮代表チームが男女で日本に連勝。「意外」な活躍を見せている。

北朝鮮がかつてアジア随一のサッカー強国であったことを考えれば、たとえ周辺国の実力が大幅にアップした現在においても、これぐらいのポジションにいるのはむしろ当たり前のことかもしれない。それが「意外」なものに映ってしまうのは、国際舞台における北朝鮮の“ブランク”があまりに長かったからだ。

1990年代の半ばから、男子サッカーの北朝鮮代表は相当な期間にわたり、国際舞台からほとんど姿を消していた。

金正日氏が審判買収を指示

その最大の理由は、大量の餓死者を出した経済難だろう。しかし同じ時期、女子柔道のケー・スンヒ、女子マラソンのチョン・ソンオクらが大活躍していたことを見れば、北朝鮮サッカーの「不在」をまったく経済難だけのせいにすることはできない。

結論を言ってしまうなら、経済難を背景とした不正腐敗の蔓延が、北朝鮮サッカーの実力を蝕んでいたのだ。その実態について、北朝鮮で長らく体育部門に従事していた脱北者のペク・チャンリョン氏が、『リムジンガン第7号』(アジアプレス出版部)の中で赤裸々に明かしている。

たとえば90年代半ば、強豪として知られる朝鮮人民軍傘下の「4・25体育団」は、軍の戦闘用通信システムまで動員した大規模な八百長に手を染めていたという。また、選手選抜では本人の実力より、親の財力を基準に決めていた。それもこれも経済難の中で、チームの維持に必要な物資を確保するためだったという。

こうした風潮は他の競技にも広がっており、一部の指導者は「(食糧事情が良好な)幹部家庭の子供たちは体型面ですぐれており潜在力がある」と堂々と理屈をこねていたほどだ。

現場では血のにじむ努力

一方、金正日総書記がサッカーW杯のアジア予選に際し、審判の買収を指示したとするエピソードも紹介されている。

そんな中にあってなお、北朝鮮スポーツが輝きを失っていないのは、現場の選手とコーチらの血の滲む努力の結果である。

同書ではほかにも、北朝鮮における「草の根資本主義革命」の牽引力のひとつとなっている民間運輸業者らの実態や、山口組など戦後日本で勃興したヤクザ組織の原形を連想させる「闇の労働市場」の成り立ちなどがレポートされている。

金正恩氏の暴走により、何が起きてもおかしくないのが現在の北朝鮮である。そして、いざ何かが起きたとき、その先でどんなことが繰り広げられるかを占うために、同書は必読と言える。

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