北朝鮮の金正恩第一書記は、業績づくりのため水力発電所「白頭山先軍青年発電所」の建設を進めているが、現場周辺の麦畑が丸裸になる被害に農民たちが遭っているという。その詳細をデイリーNK内部情報筋が探った。

「白頭山先軍青年発電所」の建設現場を現地視察する金正恩氏/2015年4月20日付労働新聞
「白頭山先軍青年発電所」の建設現場を現地視察する金正恩氏/2015年4月20日付労働新聞

中朝国境に近い両江道(リャンガンド)白岩(ペガム)郡で進められている「白頭山先軍青年発電所」の建設工事には全国から多くの軍人や突撃隊員が動員されているが、彼らが小麦畑を荒らしていると内部情報筋は伝える。

「小麦は8月5日から15日頃にかけて収穫されるが、動員された突撃隊員や軍人が夜中に畑に忍び込み、現場から6キロ四方の畑から、収穫を前にしたまだ青い小麦を根こそぎ盗んでいく。農民たちは『今年の小麦も全滅だ』と嘆いている」 

各地の建設現場に動員された軍人や突撃隊員たちによる被害は、2001年頃から毎年のように頻繁に起こっているが、当局はこれといった対策を講じず放置している。

業を煮やした農民たちは、建設現場からかなり離れた地域に続々と引っ越しており、ほぼ廃村となった村もある。小麦が盗まれた上に、収穫を控えたジャガイモまで盗まれると命にかかわるとあって、農民たちは見まわりで畑の番をしたり、畑に罠を仕掛けるなど個別で対策を行っているが、あまり効果がない。

「白頭山先軍青年発電所」の建設が始まったのは1995年。発電量が5万キロワットの小規模水力発電所だが、難工事で10年経っても完成できず、2004年からは青年同盟が工事を請け負って、完成直前までこぎつけた。

ところが、2006年10月9日に近隣で行われた第1回核実験の振動で、工事用のトンネルが崩壊した。更に2009年に行われた2回めの核実験でも一部施設が崩壊した。金正恩氏は労働党創建70週年を迎える今年10月までの完成を指示した。

そもそも、人口希薄地帯の白岩郡に多くの予算と人員を投入してまで小規模水力発電所を作る理由は、金日成一族の銅像などのライトアップに使う電力を確保するためだ。実に両江道の電力消費量の7割が銅像などに使われているという。

【関連記事】 
「速度戦」で建設現場は事故続発
平壌23階建てマンション崩壊
銅像建設に北朝鮮住民は嫌気
二兎を追う北朝鮮式建設工事

    関連記事