日本の鉄道に、かつて「チッキ」というサービスがあった。荷物を安価な料金で運ぶサービスだが、宅配便の普及した1980年代に概ね姿を消した。一方、この「チッキ」と似たような「宅配事業」を北朝鮮の鉄道がはじめたと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

北朝鮮の貨物列車
北朝鮮の貨物列車

北朝鮮の鉄道は、以前から荷物を運ぶサービスは行っていたが、荷物の破損や紛失が多く、信用性という点で不十分だった。また、荷物を送るには通常の料金に加えて、受付の職員に酒やタバコなどの賄賂まで渡さなければならないなど、不便なサービスだったという。

このサービスが変わるきっかになったのが、金正恩第一書記の「鶴の一声」だ。金正恩氏は、国家財産が不足していることから、独立採算制を指示。鉄道省も、国家から十分な予算を割り当てられず、運転資金を自ら捻出しなければならなくなった。北朝鮮のスローガンでいうところの「自力更生」だが、鉄道省は、既に実施していた「宅配サービス」の質を上げて、利益を生み出す努力をはじめる。

この宅配サービスについて、咸鏡北道(ハムギョンブクト)に住むある50代男性は次のように語る。

「最近、清津(チョンジン)の駅前に宅配便の受付窓口ができた。そこから荷物を送ると、わずか2日で700キロ離れた平壌(ピョンヤン)まで届いたよ」

驚くべきことに、宅配サービスは、電話で家まで集荷に訪れ、駅に届いた荷物を家まで配達するという。さらに、荷物の「包装」までするなど、それまでの宅配とはサービスの内容も質も、大幅に進化している。荷物の紛失事故も減少し、住民の評判は上々だ。

ただし、サービスの質は大幅に向上したが、その分、料金も大幅に値上がりした。荷物を運ぶのが一般列車ではなく、定刻通りに走る運賃が非常に高いディーゼル列車だからだ。


鉄道省の宅配サービスの向上で、最も恩恵を受けているのは卸売商人たち。これまでは、仕入れた品物を手荷物で鉄道に持ち運んでいたが、このサービスを利用すれば、その必要もない。まさにビジネス向けのサービスと言えるだろう。

ただし、情報筋によると、具体的な料金体系は不明だが、総じて割高であり「ビジネス向け」または「富裕層向け」だという。一般庶民たちが、気軽に宅配サービスを利用できるようになるには、まだまだ時間がかかりそうだ。

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