北朝鮮の朝鮮中央通信は、粛清・銃殺された玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)人民武力部長の後任として、朴永植(パク・ヨンシク)朝鮮人民軍総政治局組織副局長が就任したことを11日に明らかにした。

金正恩氏と錦繍山太陽宮殿を参拝する朝鮮人民軍の面々(参考写真)
金正恩氏と錦繍山太陽宮殿を参拝する朝鮮人民軍の面々(参考写真)

朴永植氏の前職は「総政治局副局長」だ。金正恩第一書記の再側近である黄炳瑞(ファン・ビョンソ)氏が、局長を務める「総政治局」は形式上は朝鮮人民軍の一部署になる。しかし、目的は軍事的なものではなく、軍人の思想動向を監視する政治部署であり、朝鮮労働党から指揮を受ける。つまり、政治的には人民武力部よりも格上と言える。

従来、北朝鮮の人民武力部長には、野戦軍部隊出身の軍人が就任するのが慣例だった。2012年に人民武力部長に就任した金正覚(キム・ジョンガク、総政治局第1副局長)を除けば、張正男(チャン・ジョンナム、1軍団長)、金格植(キム・ギョクシク、2軍団長)、金イルチョル(海軍司令官)などベテランの指揮官が就任してきた。

今回、金正恩氏が玄永哲氏の後任として朴永植氏を就任させたのは、「労働党に軍への統制を強化させる意図」があると見られる。また、金正恩氏が、ベテランの軍人よりも「忠誠心」の強い政治局員をより信頼しているということでもある。

金正恩氏の軍幹部人事の特徴について、世宗研究所統一戦略研究室のチョン・ソンジャン室長は次のように語った。

「金正恩氏は、総政治局の政治イルクン(職員)を要職に配置する。朴永植氏もそうだが、金元弘氏(キム・ウォノン、国家安全保衛部長)、キム・スギル氏が平壌市党責任秘書に就任するなど、総政治局の幹部の全盛期とも言える」

さらに、「野戦軍出身の玄永哲氏の粛清後、金正恩氏は政治イルクンを使って軍への統制を高めようとしているようだ。朴永植氏の就任で、野戦軍出身の幹部に対する監視と統制が強化され、彼らは萎縮せざるを得ない」とも語った。

専門知識が豊富なベテラン軍人より、現場を知らない政治イルクンが軍を掌握することで、軍内の忠誠競争を引き起こし、韓国へのさらなる強攻策や軍事的挑発へと発展することを憂慮する見方もある。

匿名の北朝鮮専門家は「専門知識を持ったベテラン軍人ではなく、金正恩体制の安定や忠誠心ばかりを考慮した人事は、軍の運営に混乱をきたし、『おべっか忠誠競争』が始まりかねない。金正恩氏の恐怖政治から生き残るための『忠誠競争』が始まっているが、こうした人事はそれをさらに加速させし、韓国に対する軍事挑発につながる恐れがある」と語った。

玄永哲氏という野戦出身の軍人を粛清・銃殺して、政治思想性の強い朴永植氏を人民武力相に就任させた今回の人事が「先軍政治の終焉」をもたらすのかもしれない。

【関連記事】
玄永哲氏粛清が事実上明らかに
処刑説否定 「悪態をつく天下逆賊集団」
恐怖政治に動揺して韓国に亡命

    関連記事