北朝鮮の各地に存在する「労働鍛錬隊」。単純脱北、窃盗、無断欠勤など比較的罪状が軽い犯罪者を収容し「肉体的負担を課して教化する」との目的で強制労働をさせる一種の刑務所だ。

通常、15日から半年で出所できることから、その惨状についての証言は多数存在するが、デイリーNKは、朝鮮人民軍保衛司令部の「607労働鍛錬隊」に収監された経験のある人とのインタビューに成功した。

「607労働鍛錬隊」は再教育が必要な人民武力部の幹部、各軍団の幹部、軍所属の外貨稼ぎ事業所の幹部などが収容されるが、その厳しさから『虎の施設』と言われている。保衛司令部直属ということもあり、他の労働鍛錬隊以上の残虐行為が繰り返され、餓死者が続出していることがわかった。

以下はデイリーNK編集部と情報筋のインタビューの内容だ。

問:607労働鍛錬隊(以下607)とはどのようなところか?

答:平安南道の檜倉(フェチャン)郡(平壌の東約30キロ)にあり、保衛司令部が管理する軍の労働鍛錬隊だ。間違いを犯した下士官や一般兵士が一般の労働鍛錬隊に収監されて、矯正されていないと判断された場合に送り込まれる。

また、保衛司令部の取り調べでスパイ罪ではなく単純犯罪を犯したことが明らかになった軍の幹部、人民武力部の外貨稼ぎ事業所の社長、基地長なども送られる。上佐(中佐に相当)、大佐、俳優、サッカーチームの監督などは607内の革命化班に送られる。ここには2年間収容されて面会は認められず、病気による保釈は莫大な賄賂を積んだ場合に限って認められる。

問:607の収容人数と仕事は?

答:400人ほどだ。最初は新入班に配置され、1~3ヶ月経つと作業班へと配置換えになる。作業班には1課、2課があり、その下には1~5班、6~10班がある。1つの班には少なくとも30人が配置され、農作業班、坑道班、木工班、建設班、畜産班などがある。

農作業班は40~60キロほど離れた畑で農作業を行う。山の中に開梱された数十ヘクタールの畑は鉄条網で囲まれていて、周囲では重武装した警備中隊の隊員たちが警戒にあたっている。

畜産班は山羊30頭、牛、羊など数十頭を飼育している。野菜班では野菜を栽培している。比較的労働強度が低いこれらの班に行けるのは、コネがあるか、米ドルで賄賂を収めた人に限る。

伐採班は607で使う薪になる木を切る作業を行う。若くて健康で逃亡の恐れがない刑期終了が近い収監者が主に配置される。外部の人間の接触する機会もある。

問:607での一日は?

答:起床は朝6時。607本所の前に班ごとに整列してから朝食前の作業に向かう。農繁期には起床時間が4時に早められる。建設現場では石拾いや砂運びをする。畑では草取りをする。空腹と貧血で倒れる人も多い。

洗顔と食事は班ごとに順番を待ってから行われる。一日の日課が終わり本所に戻ると自殺用の小石などを入れていないかポケットの中を探られる。夕食後は首領(金ファミリー)忠誠学習と歌唱をさせられる。午後10時に点呼が行われる。外部での作業途中に逃げ出す人がいるからだ。脱走が発覚したらすべての収監者は本所に隔離され、指導員や警備中隊が捜索作業を行う。

問:食事は?

答:607の畑で収穫したトウモロコシに大根の漬物だ。直径15センチの軍隊用の食器にどっさり盛られるが、皮やヒゲが取られていないので量が多く見えるだけで、トウモロコシの実はとても少ない。トウモロコシすらなく小さなジャガイモだけ1週間出されたこともある。

太陽節(金日成氏の誕生日)には肉のスープが出る。伝染病で死んだ牛がいれば何かけらかの牛肉が出ることもある。

労働強度と規律も耐え難いが、空腹は人間の耐えうる苦痛の中で最悪のものだ。若い男性がろくにご飯も食べられず1日13時間も鉱山や畑で働かされているので倒れる人が続出する。

空腹をしのぎ栄養失調を避けるには面会が必須だ。収監者の親、妻、親戚が月1回やってきて、200グラムの袋にトウモロコシの粉、砂糖、塩、トウガラシの粉を入れたものを60袋(1日2食、1ヶ月分)用意して差し入れる。受け取った食べ物は夕食後のおやつの時間に食べられる。

面会に来てくれる人がいない収監者のうち半分は餓死したり、盗んだ大根の漬物を食べ過ぎて死んでしまう。死んだ人は「死体は秘密にせよ」との607本所の指示に従って家族に連絡もせず山の中に埋めてしまう。家族からの問い合わせがあっても「知らぬ存ぜぬ」で押し通す。

問:いつ出られるのか?

答:保衛司令部の許可が出たら1日前に本人を呼んで4時間の「退所講習」という教育を受けさせる。社会復帰して党と首領に忠誠を尽くしている模範退所者の事例を聞かされ、保衛指導員から「中で見聞きしたことを外で言わない」と約束させられる。

教育が終われば入所時に着てきた服を返されトウモロコシ5キロを渡される。旅費も支給されるが、両江道だろうが黄海道だろうが距離に関係なく一律額だ。さらにトウモロコシ飯と大根の漬物が入った弁当を3食分渡される。中には607に残る仲間に少しでも腹の足しになるようにと渡していく人もいる。

前日の夜は送別会が開かれる。607に残る人々は仲間の退所を心から喜び、映画「民族と運命」「曲折多き運命」のテーマ曲など故郷を懐かしむ曲を静かに歌う。革命化班では「同志愛の歌」を歌う。

翌日、退所者は護送軍官に従って居住地の道軍事動員部に引き渡される。軍事動員部では退所証にはんこを押して退所者の軍事移動証を再発行する。

問:607の幹部の間での不正行為は?

答:607の所長はもちろん、管理監督、面会所の監督を1年勤めれば数千ドルの賄賂が当たり前のように手に入る。面会時間は10分に決められているが、賄賂を渡すと10分延長される。額が多ければさらに延長される。

昨年、保衛指導員の家で火事が起きた際には、収監者たちはこのチャンスを逃すまいと、先を争って賄賂を渡しに来た。その額に応じて班長、監視、食堂などの楽な仕事に配置換えしてもらったという。

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