日本人拉致被害者らの再調査期限となる4日を目前に、北朝鮮が時間の引き延ばしを図っている。

安倍晋三首相は3日午前の衆院平和安全法制特別委員会で、北朝鮮側が日本人拉致問題などの再調査結果の報告延期を伝達してきたと明らかにした。2日に北京の大使館ルートを通じ、「もう少し時間がかかる」との連絡があったという。

北朝鮮のこの説明を、真に受ける人はほとんどいないだろう。史上最悪の統制社会を作り上げてきた彼らならば、その気になれば、調査結果などすぐにまとめることができる。「時間がかかる」という言葉は、「今のところ提示する気はない」ということを意味しているに過ぎない。

問題は、北朝鮮が何を狙って時間を引き延ばしているかだ。

良く見かけるのは、「日本との関係を改善し、経済支援を受けたいから」との説明だ。北朝鮮が、過去にそのような目的をもって行動してきたのは事実だし、今後も長期的には、日本から経済的利益を引き出すことを目指すだろう。

しかし現在の情勢下で、日本が経済支援を行うなどあり得ないということを、北朝鮮としても良くわかっているはずだ。仮に、北朝鮮が拉致問題で誠実に対応したとしても、弾道ミサイル開発と核開発の問題が残る。北朝鮮がこれらを放棄しなければ、米国などとの協調を重視する日本が、本格的な経済支援に動く可能性はゼロだろう。

それに北朝鮮も、最近親密さを深めているロシアとの協力関係や、アフリカや中東での武器取引を通じ、経済制裁に対する耐性を強めている。日本との貿易再開は、現在の北朝鮮にとって死活的な問題ではないとも考えられる。

結論を言おう。北朝鮮が日本との交渉で時間を引き延ばしているのは、国際社会の「人権包囲網」に抜け穴を作るためだ。

金正恩氏は、自分が「人道に対する罪」に問われることを最も恐れている。この罪名の下、国際刑事裁判所で訴追されることになれば、彼の血塗られた手と握手を交わそうとする外国の指導者はほとんどいなくなる。まだ若年の正恩氏はこれからの長い人生を、世界と断絶されたまま過ごさねばならない。

北朝鮮は今、あらゆる手段をもってこうした流れに抗っている。日本との交渉を続けていれば、国連などで「国内にいる日本人の人権を尊重し、実態調査を鋭意進めている」との言い訳が可能だ。また、やはり人権問題に熱心でない一部の国が、北朝鮮の肩を持ちやすくもなる。

こうした状況は、人権問題こそが金正恩体制の最大の弱点であることを物語ってもいる。人権問題に触れることなく、北朝鮮に圧迫を加えることはできないのだ。

しかし、人権問題に対する追及を強め、それを北朝鮮の体制転換につなげていくためには、予算面でも情報面でも人材面でも現在よりはるかに大きな努力が必要になる。

そして、それは一国の努力をもって出来ることではなく、日本には米韓が、韓国には日米が、米国には日韓の協力が欠かせない。三国は結束し、従来とは質的に異なる次元の対北包囲網を構築すべきだろう。

(ジャーナリスト・李策)

    関連記事