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水産基地の密輸で、重要な役割を果たすのが北朝鮮の新興富裕層「トンジュ(金主)」だ。水産基地の責任者らは、トンジュたちの投資を誘致して、上部から水産基地建設の承認を引き出す。次に、年間50トンの水産物を平安北道に駐屯する砲司令部所属の軍部隊に送ることを約束して漁を行う。

最後に、海岸警備隊と国境警備隊にドルで賄賂を掴ませて、ワタリガニを中国に密輸する。いずれの事業も「金正恩第一書記の指示を根拠とするのが密輸をスムーズに進めるポイントだ」と情報筋は語る。

「水産基地建設と密輸での外貨稼ぎは元帥の『軍の水産部門を発展させよ』という指示が根拠となるし、軍部隊に水産部を送るのは『軍人たちの食生活を改善せよ』という指示に基づく事業だ。こうした建前の根拠を取り繕えば上層部も密輸を黙認せざるをえないというわけだ」(情報筋)

水産基地長たちは、トンジュの投資額に応じて30から200馬力の漁船を1000ドルから3万ドルで確保する。燃料のディーゼル油は中国から密輸する。では、水産物のやり取りは、どのように行われるのか。