金正恩氏が5月25日、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の結成60周年に際し、「偉大な金正日同志の意を体して在日朝鮮人運動の新たな全盛期を開いていこう」と題した長文の書簡を送った。

こうした書簡は朝鮮総連内部で「労作」と呼ばれ、今後の運動の指針となる。

前回は1995年5月、朝鮮総連が結成40周年を迎えた際に、金正日氏から「在日朝鮮人運動を新たな高い段階へと発展させるために」と題した書簡が送られている。

もっとも、北朝鮮の最高指導者から朝鮮総連に下される指示は、このように公然と伝達されるものばかりではない。むしろ秘密裏に下される指示の方にこそ、指導者の「ホンネ」は込められている。

大転換を迫る

朝鮮半島問題専門の月刊誌『現代コリア』(2001年1・2月号)は、そんな「極秘司令」をすっぱ抜いている。「独占公開・1999年4月20日 金正日が徐萬述総連第1副議長に与えた教示」というのがそれだ。

タイトルの通り、徐第1副議長(後の議長・故人)に対して与えた指導なのだが、その内容は朝鮮総連の運動に大転換を迫るものだった。

「総連は共和国の旗を掲げたからといって、左傾的になるばかりではだめだ」「右傾化しても構わない」「事業方法を転換すれば祖国の諸々の機関が非難を浴びせるだろうが、聞こえないふりをして耐えよ」などの大胆な指令に、本国追従の一辺倒できた朝鮮総連の老幹部たちは慌てふためいたとされる。

「4月20日マルスム(お言葉)」とも呼ばれるこの司令は、後に撤回されたとも言われるが、朝鮮総連は現在に至るも、内部においてすらその存在を秘密にしている。

「杓子定規はやめよ」

以下に、その要旨を掲載する。

総連は首領様(故金日成主席)の革命遺産です。敵の策動から総連を死守すれば、首領様の下で一生を愛国事業に奉げてきた韓徳銖議長をはじめ総連の老革命家たちの業績を守ることになります。それなのに党の原則第一主義にこだわって同胞群衆を失い、総連を瓦解させてはどうなりますか。我々はどのような方法と手段を使っても、総連を無条件に死守し存続させなければなりません。

総連結成から40余年が経ったのに、事業方法は結成当時と変わっていません。今の総連の事業方法を見れば、祖国でするのとほとんど同じです。総連はあくまでも敵区(非友好国・地域)にあるのですから、祖国とは違うようにすべきです。対外事業でも、祖国で声明をひとつ出せば、総連もそのままの声明を出しています。

総連では外柔内剛の原則を守らねばなりません。そのためには、組織内部での教育はしっかり行ないながらも、同胞を対象とした事業は彼らの思想の状態と特性に合わせて幅広く行なわなければなりません。

総連は共和国の旗を掲げたからといって、左傾的になるばかりではだめです。それでは敵区組織が必要ないのも同然です。

総連は事業方法を根本的に変えるようにしなければなりません。

今、日本反動が総連への攻撃を強めているのは、総連があまりに杓子定規にやっていることとも関連しています。日本の土地で生きていくのですからまわりに合わせる時はそうしながら原則だけを捨てなければよいのに、杓子定規に推し進めるからそのようなことが起きるのです。総連は敵の策動に対処し、自らを守るための闘争を繰り広げながらも、祖国とは違ってより独自性を持って活動していかなければなりません。

総連では何よりも内部を整え、核心陣地をしっかり固めなければなりません。事業方法を転換せよと言ったのは、核心陣地の保存が前提です。

総連では同胞群衆との事業方法を決定的に改めねばなりません。在日同胞の中で祖国愛を発揚するには、総連が統一戦線組織という外皮を被る方が、朝鮮労働党の地区党であるとの印象を与えるよりいいでしょう。とくに世代交代が進んだため、新しい世代との事業方法を彼らに合わせるように転換すべきです。今はあまりに原則一辺倒で脱線を恐れるので、同胞群衆が次々脱落しています。

私たちは許宗萬責任副議長と若手たちが「改良主義」の外皮をまとって事業をしながら、内実を充たそうということです。

総連がこのように事業方法を転換すれば、祖国の諸々の機関が非難を浴びせるでしょう。それには聞こえないふりをして耐えなければなりません。私だけがトンム(同務)たちを理解していればいいのです。

思想事業方法を敵区の実情に合わせ根本的に改めねばなりません。『朝鮮新報』の内容は日本の環境と同胞たちの要求に合わせちゃんと編集されていないばかりか、総連の新聞としての特色が生かされていません。ゴーリキーの『母』という小説には革命という言葉はひと言もありませんが、読めば革命の必要性を感じるようになります。人々の感情と嗜好に合う話をして人々が自ら真理を見つけるようにしなければなりません。

日本で朝鮮学校を出た青年が(同胞人口の)20パーセントになるといいますが、それもひいき目に見てのことで本当はそれ未満でしょう。総連では民族教育の内容と方法もいっそう改善していかなければなりません。

総連は対外事業を自らの立地条件に合わせていかねばなりません。そうしてこそ朝日関係で総連の位置が明白になります。総連は祖国を代弁するだけでなく、祖国と日本をつなぐ掛け橋の役割を務めなければなりません。祖国が日本に対して高圧的に出ると、総連まで同じようにするので日本人は気を許しません。われわれに近寄ろうにも近寄る術がありません。総連が日本当局にもっと接近し、彼らの心の内を探り出すこともひとつの闘争方法なのに、ただ頑強さを打ち出しているだけなので、そのような仕事がきちんとなされていません。

反動勢力とは正面から対決するばかりでなく、回り道することも知るべきです。今は対立すればするほど弾圧が激しくなり、その方法も狡猾になっています。

我々の目標は総連の群衆地盤の拡大です。総連が事業方法を改め右傾化しているという話が敵の間で広がってもいいのです。それで私が総連をひどく叱りつけたという話が出ても問題ないし、敵の中で私が改良主義に走ったようだとの話が出回ってもいいのです。

今の情勢の下で赤旗は心の中に秘めて前に掲げてはなりません。必要な時に掲げれば良いのです。

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