北朝鮮は、今年10月10日に「労働党創建70周年記念日」を迎えるが、当局が準備事業を優先させることによって主要産業施設への電力供給が低下。「住民経済に悪影響が及ぶのでは」という不安感が広がっていると米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えた。

1989年「世界青年学生祝典」のために、北朝鮮が無理して作った綾羅島メーデー・スタジアム
1989年「世界青年学生祝典」のために、北朝鮮が無理して作った綾羅島メーデー・スタジアム

1989年、平壌で開かれた「第13回世界青年学生祝典」は、前年に韓国で開催されたソウル・オリンピックに対抗して行われた。

イベントに向けて、平壌国際映画会館、東平壌劇場、羊角島競技場など様々な箱モノが建設されたが、中でも綾羅島メーデー・スタジアムは15万人もの観客を収容できる巨大施設だ。

当時の金日成体制は、「祝典は大成功に終わった」と大々的に宣伝したが、莫大な資金投入の後遺症によって、90年代中盤からの大飢饉「苦難の行軍」が発生した。北朝鮮住民たちは、そのことを決して忘れていない。

党創建70周年記念日に向けて大々的に行われている大型工事を見ながら、北朝鮮住民は1989年の悪夢を思い出し、またぞろ経済難が起きるのではと恐れている。

製鉄所、食品工場など稼働中断…住民「苦難の行軍再来か?」

実際、北朝鮮各地の基幹産業は、優先される大型建設事業に電気を食われて可動が中断、もしくは完全停止している状態だ。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の内部情報筋は、次のように語った。

「今年は、それなりに雨が降ったので西頭水(ソドゥス)とプリョンの水力発電所がフル稼働しているが、工場、企業所に供給される電力は減少している。3月末から稼働に入る予定だった金策製鉄所の電気炉はまだ稼働できていない」

金策製鉄所の電気炉は、80トンクラスの溶鉱炉だ。北朝鮮はこの製鉄所で無煙炭を燃料にして「チュチェ鉄」を生産していると宣伝してきたが、失敗に終わり、電気炉に交換したばかりだという。

また、今の時期は農業にも電気が必要なことから、製鉄所まで電力が回らないと両江道(リャンガンド)の内部情報筋は伝えた。

「恵山(ヘサン)の基礎食品工場、靴工場、編み物工場は電力難で供給が中断された。まともに電力が供給されているのは恵山鋼鉄工場だけだ」

電力が供給されているという「恵山鋼鉄工場」。実は、ここでは、金日成氏、正日氏の銅像の建設や、鴨緑江周辺のマンション建設に必要な鉄鋼を生産している。やはり、国家による宣伝事業が優先されていたわけだ。

【関連記事】
北朝鮮の恐怖政治が生み出した流行語 「モヤシ頭」とは?

    関連記事