中朝国境国境を流れる鴨緑江の堤防も個人耕作地になっている。
中朝国境を流れる鴨緑江の堤防も個人耕作地になっている。

朝鮮半島では伝統的に春は飢えの季節だ。越冬用の蓄えが底をつき6月の麦の収穫までは山菜などに頼って飢えをしのぐ。そんなことも韓国では昔ばなしとなったが、北朝鮮では今でも深刻な問題だ。春を迎えて絶糧世帯(食糧の蓄えが底をついた家庭を指す北朝鮮の用語)が増えつつある。

北朝鮮政府が協同農場で進めている分組(ブンジョ)管理制はそんな端境期を乗り切る「切り札」として期待を集めたが、農民たちの期待はダダ下がり、今年は個人耕作地に力を入れるという。

約束された分配受け取れず農民の生産意欲低下

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は「去年までと違って今年は協同農場所有の田畑より個人耕作地の方に力を入れると皆が言っている。分組管理制が導入されてから協同農場で一所懸命働くようになったのに、約束された分配がまともに行われなかったからだ」と語り、次のように続けた。

さらに「軍隊の農業支援や割当量が達成できなかったという口実で、分配量そのものを減らされてしまった。そもそも割り当てを達成できなかったのは、種が確保できなかったからなのに……。今年はもうだまされない」と強い不満を口にした。

情報筋によると、昨年、両江道の協同農場では各自に187キロが分配されるはずだった。しかし、実際に分配されたのは90キロにも満たなかった。2013年には174キロのはずが60キロしかもらえなかった。

「核心階層の労働党員ですら『党への忠誠は腹いっぱい食ってから』と言って個人耕作地に力を入れるように言っている。農場宣伝室と管理委員会に掲げられている『農業第一主義』のスローガンの前に『個人』と書き足した方がいいという冗談も飛び交っている」(内部情報筋)

余計な作業で農業に集中できないとボヤく農民

また、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)では、建設現場への動員や各種農機具の供出要求に苦しめられ農業に集中できないとボヤく農民たちの声を伝えている。

ビニールハウスを使わずに苗を育てる冷床苗床を覆う「ナレ」と呼ばれる柵を1世帯あたり幅1.2メートル、長さ10メートル編んで供出するように要求されているのだ。わらを編んで毛布のように厚くしたものだが、この時期にはわらがなかなか手に入らない。供出できなければ金を払えと言われるのではないかと心配する農民の声を内部情報筋は伝えている。

農民たちが供出を要求されている「ナレ」とそれで囲まれた苗床
農民たちが供出を要求されている「ナレ」とそれで囲まれた苗床

より小さな「圃田担当制」への移行の動きも

一方で7日の労働新聞は、平安北道(ピョンアンブクト)宣川(ソンチョン)郡のソッカ協同農場で「基本生産単位が家族が共に働くように再構成された」「条件が異なる圃田を公明正大に分担する事業も圃田担当責任制に対する党の政策の正当性と生活力を立証する重要な問題の一つである」などと圃田担当制によって得られた去年の成果を強調した。

従来施行されてきた10~15人単位の「分組管理制」から家族4~5人単位の「圃田担当制」に移行しつつあるものと思われる。

また、分配制度もわかりやすくなったようだ。労働新聞は「トウモロコシを1坪あたり15本を植えてそのうち10本が個人に分配されて残りは国に収めるという形でわかりやすく認識させた」と伝えている。個人に分配される量と国に収める量の割合が、7対3になったという計算だ。

ソウル大学統一平和研究院のチャン・ヨンソク先任研究院は韓国の聯合ニュースに「北朝鮮当局がこの仕組みを、労働新聞が優秀事例として紹介したソッカ協同農場をモデルにして全国的に普及させるかはもう少し様子を見る必要がある。しかし、北朝鮮が農業を家族中心の単位に移行させ、たくさん生産するほど多くの分配を得られる制度の導入により、労働意欲を高めようとしているのは間違いないだろう」と語っている。

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