北朝鮮で、朝鮮人民軍の将校たちが、上官に賄賂(わいろ)を払って続々と除隊しているという。背景には、地位や権力のあるうちに老後の資金を貯めておかなければならない、北朝鮮軍の高級幹部たちの事情がある。彼らの蓄財の手口は様々だが、ここではそのうち3種類を紹介する。
(1)兵士の除隊に便宜を図り儲ける
平安北道(ピョンアンブクト)の軍関連のデイリーNK情報筋は「除隊を控えた人民武力部の幹部や高級将校たちは、手当たり次第に外貨稼ぎに走っている。総政治局、隊列補充局、軍医局の幹部たちは地位を利用してドル、円、人民元などをかき集めている」と語った。
情報筋によると、高級幹部たちは息子を軍隊に入れた親たちから賄賂を受け取り、よりよい部隊への配置や前倒しで除隊させるといった便宜を図っている。軍団病院や師団病院に患者として入院させ、3?6ヶ月後にニセの診断書を作って除隊させるという。これにかかる賄賂の額は、一般兵士の場合は500ドル、将校の場合は1500ドルが相場だ。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、軍の基地は僻地にあることが多いため、一緒に移住した将校の家族が非常に不利益をこうむるとのことだ。
たとえば、北朝鮮の僻地で子供にまともな教育を受けさせるのは不可能に近い。また、軍関係者の妻は市場での商売が禁じられているため、収入は夫が軍から受け取る給料に頼らざるを得なくなる。それでは、公定価格とはかい離したヤミ相場の商品を買うのは不可能だ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面軍の将校は、社会的地位は高くとも生活面で制約が多いため、賄賂を払ってまで除隊しようとするのだ。その数があまりにも多いため、2年前には金正恩氏が直々に「将校の除隊を食い止めろ」と指示したとRFAは報じている。
(2)軍用米横流しで儲ける
一方、中朝国境沿いの部隊にいる将校は軍用食糧の横流しで儲けているという。
情報筋によると、今年の初め、恵山(ヘサン)税関の商品検疫所が付近の軍部隊にコメを1キロ2000ウォンで売り渡し、軍はそれを民間人に4500ウォンで売って儲けたとのことだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面恵山でのコメの価格を見ると、収穫後の11月から1月にかけては4900ウォンから5500ウォンの間で推移していたが、2月20日以降は4500ウォンに下がっている。これは軍部隊によるコメの横流しと安売りによるものだと思われる。ちなみに同時期の恵山では1ドルが8150ウォンから8400ウォンで取引されていた。
(3)平壌での居住権を売り渡して儲ける
さらに、平壌在住の高級幹部たちはトンジュ(金主)と呼ばれる新興富裕層から賄賂を受け取り、平壌に住めるように便宜を図っているという。
「内務局8総局の高級幹部たちは、平壌市内に住みたがっている人に6000ドルで総局傘下の平壌駐屯部隊の労務者(軍属)の身分を売り渡している。ブローカーが平壌に住みたがっているトンジュを探しだして高級幹部に紹介する形を取っている。」(内部情報筋)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ある脱北者は韓国紙・中央日報の取材に対し、「商売でのし上がってきたトンジュは平壌のすぐ隣りにあって居住に面倒な許可のいらない平城に多く住んでいた。一方で、平壌のトンジュは海外居住者、海外同胞、中央党、外貨稼ぎ機関などの権力に近い人間が多い」と語っている。
6000ドルは、北朝鮮社会では大金である。それを払ってでも平壌に住もうというのは、それだけ得られる利益が大きいからだろう。
軍幹部たちが、こうまでして除隊後の資金集めに走る理由は何だろうか。「最近、40?50代の将校同士は顔を合わせれば合言葉のように『儲かってまっか?』と挨拶する」(内部情報筋)という。
彼らは除隊後、一般の企業所などに配属されるが、特別待遇もなく経済的に窮するのが普通だという。ケガをして除隊した栄誉軍人でも商売をしなければ生きていけないのが現状なのだ。