北朝鮮の通貨は「朝鮮ウォン」だが、実際に最も使われているのは「中国人民元」だ。通貨としてまったく信用されていないからである。

デイリーNKジャパンが、昨年入手した北朝鮮北部の市場の内部映像には、売り手も払い手もごく普通に中国人民元でやり取りする様子が捉えられている。

しかし、表向きは外貨使用を禁じる北朝鮮当局が、「市場の場所代は外貨で出せ」と、理不尽な要求をしていることが1日、デイリーNKの内部情報筋の話で明らかになった。

両江道(リャンガンド)の内部情報筋は次のように語った。

「外貨使用を禁じているのに、市場管理所は『場所代を外貨で徴収』なんてふざけたことを言っている。庶民は検閲されて市場管理所は検閲されないなんてふざけ過ぎだと不満の声が多い」

「市場管理所」とは名前のとおり、市場を管理する機関で商人たちから「場所代」を徴収する。しかし、こうした理不尽な事を要求するので、恵山(ヘサン)農民市場では、外貨を取り締まる保安員(警察)と商人の間でいざこざが起こった。

衣料の卸売業をしていた商人2人が、市場の巡回をしていた保安員(警察)が、ろくに調べもせずに「外貨をもっているだろう」と、ある商人の売り上げが入った鞄(ウエストバッグ)や持ち物を没収しようとした。これに対して当の商人が怒りの声をあげた。

「いい加減なことをせずに、やるならちゃんと調べろ!」

瞬く間に、周囲は人だかりとなった挙げ句、保安員はカバンを返して「後で保安署に来い」と捨て台詞を残して逃げるように立ち去ったという。

北朝鮮ウォンは、信用もなく面倒極まりない

恵山市場の1日の場所代は1中国人民元。北朝鮮ウォンの最近の実質レートだと1350円だ。場所代を中国元で払うと1元紙幣1枚ですむが、北朝鮮ウォンだと、1,000ウォン札、200ウォン札、100ウォン札、50ウォン札と非常に面倒になることも朝鮮ウォンが嫌われる原因だ。

「北朝鮮当局は、われわれが汗水流して稼いだお金を貨幣改革(2009年)とかで吸い上げて、苦しめてきたから今では誰も朝鮮ウォンを信用していない。若い連中でも朝鮮ウォンに価値がないことを知っている」(内部情報筋)

また、市場の商人からすれば、「外貨を使うな」と要求する北朝鮮当局が、外貨をため込んでいることは周知の事実だ。

意地でも「社会主義」という建前を貫こうとする北朝鮮の「ウリ(われわれ)式社会主義」の矛盾は、こんなところにも表れている。

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