水原市内にそびえ立つ巨大教会。手前は世界遺産の水原華城。(本文とは関係ありません) ©Seongbin Im
水原市内にそびえ立つ巨大教会。手前は世界遺産の水原華城。(本文とは関係ありません) ©Seongbin Im

洗脳と霊感商法

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文鮮明氏(故人)が1954年に韓国で設立したキリスト教系の新興宗教、世界基督教統一神霊協会(統一教会)。以前から同性愛を認めない立場を鮮明にしていたが、渋谷区が「同性パートナーシップ制度」導入する方針を打ち出して以来、反同性愛的なチラシを同区内で配布するなど活発な動きを見せている。

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統一教会は1960年代半ばから70年代にかけて、「洗脳」とも指摘された強引な布教で社会問題を引き起こした。また、80年代には「霊感商法」でも激しい批判を浴びた。

統一教会が被告となった1993年の民事訴訟で、福岡地裁は、霊感商法などの経済活動は統一教会の指揮監督によって組織的、計画的に行われていたとして統一教会の使用者責任を認定。

判決で「布教活動の一環として行われたものであったとしても、その目的、方法、結果において到底社会的に相当な行為であるということはできない」と批判し、損害賠償を命じた。それ以降、統一教会の使用者責任を認める判決が相次ぐなど、司法からもその問題性を厳しく指摘されている。

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統一教会のほかにも、最近になって日本で名前を知られるようになった韓国のキリスト教団体がある。

キリスト教福音浸礼会(救援派)。この団体を率いてきた兪炳彦(ユ・ビョンオン)氏は、昨年4月に沈没して304人もの死亡・行方不明者を出したセウォル号の運行会社オーナーだった。彼の指名手配に抗議して数多くの信者たちが教団施設に立てこもり、連日連夜の抗議活動を繰り広げたことは記憶に新しい。

韓国ではキリスト教(プロテスタント)団体が、こうした騒動の中心になることはさほど珍しいことではない。あまりに事件が続くため、韓国メディアの「定番ネタ」と化しているほどだ。

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その代表的な例として、23年前に起きた終末論騒ぎがある。

終末論騒ぎで大混乱

韓国が軍事政権による支配から民主化して間もない1992年、キリスト教系のタミ宣教会のイ・ジャンニム牧師が「10月28日の0時に世界は終わる」と終末論を唱え始めた。すると、彼の言うことを信じた多くの信者たちが街頭に立ち、「携挙(世界の終わり)が来ます!」と叫びつつ布教活動に熱を上げた。

仕事や家庭を捨て、全財産を教会に寄付する人が続出した。教会に行くのを親に止められた女子高生が服毒自殺するなど、社会がパニックに近い様相を呈した。

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やがて「予言」された時間が訪れたが、もちろん世界の終わりは来なかった。イ牧師は詐欺容疑で逮捕され、懲役1年と多額の罰金を命じられた。

当時、留学生として現場を目撃した日本人男性は、次のように語る。

「予告された時間が迫ると、教会前には多くの人が集まりました。世界各国の取材陣も『詐欺教会に家族を連れて行かれた』と泣き叫ぶ被害者家族たちもいました。あたりは一種の騒乱状態になり、午前0時が過ぎたことに気づかないほどでした。

0時半ごろになると、疲れた顔をした信者たちが次々に教会から出てきて言葉少なげにどこかへと去っていきました。

去年、救援派の信者たちが施設に立てこもったのを見て、20数年前のタミ宣教会の終末論騒ぎを思い出しましたね」

↑「世界の終わり」が来なかったことを伝える当時のニュース番組(字幕なし)

信者がテレビ局に乱入、放送機器を破壊

終末論と並んで韓国社会に大きな衝撃を与えたキリスト教関連の事件といえば、1999年に起きたMBC襲撃事件だろう。

韓国三大ネットワークのひとつ、MBCの時事番組「PD手帳」は当時、ソウルにある万民中央教会のイ・ジェロク牧師の不正を暴く番組を放送しようとしていた。信者からかき集めた金をアメリカでのギャンブルにつぎ込んでいたこと、信徒名義で金融機関から不正に貸し出しを受けていたこと、信徒にセクハラを行っていたことなどが主な内容だった。ところが、この番組の内容が事前に教会側に漏れてしまった。