「北朝鮮がミグ21のパイロットを何人か提供してくれることは可能と思われますか?そうすれば双方の利益になるでしょう。われわれの側にとっては、あなた方が防空に参加してくれれば、パイロットが足りないというわれわれの問題を解決してくれることになります。北朝鮮側にとっては、パイロットが実戦の知見を得ることになるでしょう。なぜかと言うと、イスラエル人はあなたがたの想定された敵と同じ飛行機を使い、同じ戦術を用いているからです」(※注)
このときから、北朝鮮空軍の第4次中東戦争参戦に向けた動きが始まるのである。
そして、ここでシャーズィリーの要請を受け入れ、金日成の説得に当たることになったのは、学校教員から軍の「英雄」にまでのぼりつめて行った、一見風変わりな経歴を持つ男だった。(つづく)
(宮本 悟 聖学院大学教授)
【連載:朝鮮人民軍 海外戦記】
中東編(3)
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金日成を対イスラエル参戦に動かした北朝鮮「元学校教師」の履歴書
※注=初出[宮本悟解説、池内恵資料解題・翻訳「北朝鮮の弾道ミサイル開発の起源─シャーズィリー・エジプト軍参謀総長の回顧録から」『東亜』553号(2013年7月)]
朝鮮人民軍 海外戦記
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暗殺、亡命、失脚…北朝鮮空軍「中東派兵」立役者たちの運命
聖学院大学基礎総合教育部特任教授。1970年生まれ。1992年、同志社大学法学部卒。1999年、ソウル大学政治学科修士課程修了(政治学修士号)。2005年、神戸大学大学院法学研究科博士後期課程修了(博士号/政治学)。2006年から日本国際問題研究所研究員、2009年から聖学院大学総合研究所准教授などを経て、2014年から現職。