金融商品、ICカードで北朝鮮ウォンを活性化

北朝鮮経済は、日増しに「市場経済化」が進んでおり、非公式に流れこむ「外貨」も相当な額に達すると言われている。信用がなく、使い勝手も悪い「北朝鮮ウォン」は通貨としての役割を果たせず、今では中国の人民元が大量に流通している。

平壌地下鉄駅構内の売店(本文とは関係ありません) ©Matt Paish
平壌地下鉄駅構内の売店(本文とは関係ありません) ©Matt Paish

こうした状況のなか、北朝鮮の中央銀行は北朝鮮ウォンの活性化に乗り出そうとしている。

朝鮮中央銀行のキム・チョンギュン総裁は朝鮮総連系の「朝鮮新報」のインタビューで、「現在、国の経済建設で提起されている資金需要を国内の資金を円滑に回転させる形で満たすことに力を入れている」「その一貫として新しい金融商品の開発、人民生活の領域でのカード利用などを推進している」と述べた。

現実は「モヤシを買うのも中国の人民元」

こうした当局の展望に対して、北朝鮮の人々の冷淡な反応を見せる。

慈江道(チャガンド)の内部情報筋は米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に対して次のように語った。

「生活に欠かせない市場はもちろん、国営商店ですらモヤシから生活必需品に至るまで人民元で取引されている」

「2009年の貨幣改革(デノミ)の影響で北朝鮮ウォンは貨幣としての価値を失った」

「当局は北朝鮮ウォンを流通させるために銀行への預金とICカードの使用を奨励しているが、人々の反応は冷めている」

北朝鮮の銀行に預けても「引き出せない」

北朝鮮政府は2009年11月30日に100対1のデノミ(通貨切り下げ)措置を発表した。同時に交換できるのは1世帯あたり10万ウォンまでで、残りは国に収めるか銀行に預けるようにした。しかし、銀行に預けても引き出せないので、事実上国に全財産を奪われたも同然となった。

幹部や富裕層は、それ以前から私有財産をドルや人民元に両替して保有することが一般化していたため、大きなダメージは受けなかったが、主に北朝鮮ウォンを使っていた一般庶民や市場の商人たちは大打撃を受けた。

また、デノミ以前でもインフレは起こっていた。2004年と2009年のコメ1キロの価格は人民元では3.6元と落ち着いているが、北朝鮮ウォンでは800ウォンが2200ウォンと激しく上がっていた。デノミ後はさらに激しいインフレを引き起こし、コメの値段は2ヶ月で30倍以上に上がった。【参考記事】北コメ価格が連日最高値を更新…1キロ3500ウォン

価格上限制で実勢価格より物を安く売ることを強いられた商人は店を閉めてしまい、極端な物不足も発生した。

デノミで全財産のほとんどを失った北朝鮮の人々は、「銀行に金を預けるなら大同江に投げ捨てた方がマシ」と言うほど銀行に対して不信感を持つようになった。その後、北朝鮮ウォンは完全に信用を失い、外貨で物を売り買いすることが一般化してしまった。

デノミに関しては、主導した朴南基(パク・ナムギ)労働党財政部長(当時)が、翌年2010年3月12日に平壌で公開銃殺された。

朴南基氏の公開銃殺に関しては、北朝鮮から一切の報道がなく、その後も「更迭にすぎない」との否定情報もあったが、2013年11月の張成沢処刑に際に、判決文でも明かされ改めて処刑されたことが確認された。

【参考記事】
デノミを主導した朴南基が3月12日に平壌で公開銃殺
「貨幣改革のせいでキムチすら食べられない」北貨幣価値1年で半減

平壌に進出したオートスリアのコーヒーチェーン店「ヘルムート・ザッハース」のメニュー ©Uri Tours
平壌に進出したオートスリアのコーヒーチェーン店「ヘルムート・ザッハース」のメニュー ©Uri Tours

銀行にお金を預けるのは「キングオブ馬鹿」

別の内部情報筋はRFAに対して次のように語った。

「2002年にも政府は企業の自主性と賃金引き上げを保障するとしてタンス預金を銀行に資金を集めるための金融改革を発表したが、銀行は信用されていないので失敗した」

「2009年には1:100のデノミが行われて市場が大打撃を受けた。『銀行にお金を預けるのはキングオブ馬鹿だ』が流行語になったほどだ」

北朝鮮政府は人々の手元にある外貨を回収するために様々な手を売っている。繰り返される外貨使用禁止令や最近相次いでオープンさせているコーヒーショップ、ピザ屋やコンビニはその一環だと言われている。

【参考記事】北朝鮮の一部地域で事実上の通貨「外貨」の使用が禁止

    関連記事