夫婦のいざこざがきっかけで住宅没収

北朝鮮の市場経済化に大きな役割を果たしている現地在住の華僑「在朝華僑」たち。出生成分もなく労働党や軍隊にも入れないが、合法的に中国と北朝鮮を行き来できる身分を利用して商売に励んできた。ところがいま、彼らが所有する住宅の没収に当局が乗り出している。

会寧市中心部の様子(参考写真) ©Raymond Cunningham
会寧市中心部の様子(参考写真) ©Raymond Cunningham

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は5日、華僑が違法購入した住宅を当局が没収していると伝えた。咸鏡北道の内部情報筋は、語る。

「会寧(フェリョン)市の駅前洞(ヨクチョンドン)に住んでいた華僑のチャンさんの妻が子ども2人を連れて中国に逃げた」その事件をきっかけに会寧市当局は華僑が所有している違法住宅の没収に乗り出した」

北朝鮮出身の華僑チャンさん夫婦は6年間別居していたが、夫は違法購入した家で25歳年下の女性と同棲し、妻も別の家で4歳年下の男性と同棲していた。妻はこの男性とのいざこざが絶えず、結局1月中旬に中国に逃げて街の噂となった。

これを知った会寧市当局が華僑所有の違法住宅の調査を行ったところ、市内に住む32世帯の華僑が56軒の住宅を所有していることが判明したという。

一方、別の咸鏡北道の内部情報筋はRFAに次のように語った。

「当局が華僑の家を没収しているという話は聞いているが、そのきっかけになるような事件があったとは聞いていない」

「華僑は宿泊業を営むために住宅を購入するが、他人名義になっているのでいくら調査しても全部没収するのは無理」

体制に翻弄される北朝鮮の華僑

北朝鮮に住む華僑の数は2009年時点で5000人。国籍は中国だが北朝鮮の公民証を持っている。50年代末までは中国語で教える華僑学校が存在し、ある程度の自治権も持っていた。

しかし、中国との関係が悪化した頃から華僑に対して帰化キャンペーンが繰り広げられ、華僑学校でも朝鮮語で教えることを強いられた。文化大革命の時代には華僑に対する圧迫がさらに強まり、帰化か帰国を強いられ華僑学校も閉鎖された。

1971年、中国の周恩来総理の訪朝をきっかけに華僑抑圧政策も緩和され、中国国籍の回復も認められた。1979年からは中国への帰国を希望する華僑に対して中国政府が支援するようになった。

1990年代の苦難の行軍の頃、華僑たちは中国で買い付けた物資を北朝鮮で売って財産を築いた。今では北朝鮮の市場経済化に大きな役割を果たしている。

しかし、金正恩政権下で再度華僑に対する締め付けが強まっており、若者を中心に中国に帰国する人が増えていると言われている。

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