デイリーNKでは「北朝鮮の同性愛事情」と題して6回に渡って北朝鮮の同性愛者のことについて連載した。

【北朝鮮の同性愛事情-2-】北朝鮮のゲイは「理解も迫害もされない」
【北朝鮮の同性愛事情-3-】北朝鮮でゲイが発覚すればどうなる?処遇はお上のさじ加減次第

米国の北朝鮮専門ニュースサイトNKニュースは、脱北者が北朝鮮の同性愛事情について語った記事を先月29日に掲載した。

10年の兵役期間、男性同士で性行為

デイリーNKジャパンでは「北朝鮮の軍隊で同性愛的行為が行われている」と伝えたが、民間人の間でもそのような話が出回っているようだ。証言者は語る。

北朝鮮でゲイを見たことはないけど、大人たちから軍隊での話をよく聞かされた。

北朝鮮の兵役は10年。都市や村のそばにある基地にいるならともかく、山奥の基地に配置されたら10年も女性を見ることさえできなくなる。私の兄も13年間女性を見ることはなかったそうだ。女性の姿を見るには7から10の山を越えていかなければならなかったほどだそうだ。

それで、かわいくてきれいな年下の部下と関係を結んでしまう。中には本当にゲイがいるかもしれないが、ほとんどは女性の代わりだという。

農村で見た「トランスジェンダー」

続いて証言者は北朝鮮でトランスジェンダーの人に会った時の思い出を語った。

北朝鮮でMtFのトランスジェンダー(注)の人に会ったのは一度きりだ。

10代の頃、農村の支援に行かされた時の話。山奥の村でとある男性を見かけた。彼は川の畔の石に腰掛けていたが濃い化粧をしていた。すごく変に思って村の人に聞いてみた。

彼は都会出身で化粧と女装をしていたが、親に連れられてこの山村にやって来たとのことだった。直接話をすることができなかったので詳しくはわからないが、とても変だけど興味を持って何度も彼の姿を見に行った。

男性のように振る舞って着飾る女性は何人も見た。彼女たちは男性とはデートをせず女性とだけデートする。とても優しくて一度付き合うと恋に落ちてしまう。しかし、北朝鮮では悪いこととされているので、親は暴力を振るってでも連れて帰ろうとする。時には保安員(警察)を呼ぶことすらある。

もっとも、違法ではないので逮捕されることはない。せいぜいできるのは「もう男性の格好はしない」と念書を取ることぐらいだ。嘲笑されたり人々の噂の的にはなっても村八分になったりはしない。

トランスジェンダーの人は存在するが、性転換手術は行われていない。他国に比べて医療水準が著しく遅れていることと、手術台を払う経済力を持ちうる人が極めて少ないからだ。しかし、生まれた赤ん坊がインターセックス(両性具有)だったら、医者は親と相談した上で手術でどちらかの性にしてしまうという噂を聞いたことがある。

「お兄さん」か「お姉さん」かわからなくても

続いて彼女は隣人について話す。

うちの隣に「お兄さん」と呼ぶべきか「お姉さん」と呼ぶべきかわからない人が住んでいた。その人は男性と結婚して子どもを2人産んでいて、セクシーで街で一番の巨乳の持ち主だったが、みんなその人のことを男性だと思っていた。

北朝鮮では女性は自転車に乗るものでないとされているが、その人は乗っていた。保安員もその人が男性か女性か見分けがつかないからだ。

その人は誰にでも親切だったので私も好きだった。夫を亡くして長年一人で暮らしていた母の友人がその人と恋に落ちたので、私もその人と仲良しになった。

彼女は本来男性の役割とされている家の中の仕事でも全部こなした。夫との仲もよく、子どもたちにとっても良い母親で一家の稼ぎ頭だった。

町の人々は彼女の噂をしていたが、それは彼女のセクシュアリティを悪く思ってではなく、いい家族を持ったうえに商売上手で金を稼いでいたことへの嫉妬心からだったと思う。

北朝鮮の人々は、LGBT(注)の人々のうわさ話はしても、村八分にはしたりしなかった。同性愛が何かもわかっていないし、そもそも北朝鮮の人々にとって、暇な時にすることはうわさ話ぐらいしかないから。LGBTが何かわかったのは韓国に来て大学に通うようになってからだ。

(注)MtFのトランスジェンダー・・・生物学的には男性だが、女性を自認する人。一般的には「性同一性障害」と言われることが多い。ただし、編集部としては「障害」という言葉が使われることには同調していません。

(注)LGBT・・・レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーなどのセクシャルマイナリティの総称。

 

    関連記事