朝鮮人民軍の女性兵士(本文とは関係ありません)©Matt Paish
朝鮮人民軍の女性兵士(本文とは関係ありません)©Matt Paish

北朝鮮、レズビアンカップルを処刑

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最近、イスラム国(ISIS)が同性愛者とみなした男性を塔から突き落として処刑したというニュースが全世界を駆け巡り衝撃を与えている。

ISISのみならず多くのイスラム教国では同性愛を違法行為をして罰しており、イランでは実際に処刑されたケースも多く報告されている。

西欧でも違法行為だった同性愛が、ここ20年で違法ではなくなった。現在ではEU圏内で同性愛を違法とする国はないが、昨年ロシアが同性愛宣伝禁止法を制定したことで世界各国から激しい批判を受けている。

では、北朝鮮ではどうだろうか。

前回の記事で、北朝鮮には同性愛を違法とする法は存在しないが概念すら理解されていないと伝えた。しかし、アメリカ人のジャーナリスト、ディエゴ・ブニュエル氏がナショナルジオグラフィックの番組で北朝鮮を訪れた際、現地のフランス語ガイドに同性愛について質問するとそのガイドは「違法だ」と答えている。

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また、2011年9月に咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)市ではレズビアン(女性同性愛者)カップルが処刑されている。

結局違法なのか、合法なのか?

北朝鮮では、事実上法治主義が確立しておらず、三権分立は確立どころか否定的だ。3審制ではあるが最高裁まで行くケースは非常に稀である。

弁護士も被告を弁護するどころか被告を責め立てる役回りだ。裁判所ではまともな裁判は行われず「お白洲」のように刑の申し渡しを行うだけだ。

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ところが、韓国の対北朝鮮放送「自由北朝鮮放送」によるとレズビアンカップルが問われた罪は、よく使われる「風紀紊乱罪」(刑法184条に含まれる)ではなく「資本主義の思想に染まった罪」(刑法183条に含まれる)だった。

「家でみだらな行為をした」「日本で染まった腐敗病気資本主義思想に浸り風紀紊乱行為を行った」というのが処刑の理由だ。では、ここで北朝鮮の刑法の該当する条文を見てみよう。

刑法183条(退廃的な文化搬入、流布罪)
退廃的で色情的で醜い内容を反映した絵、写真、図書、録画物、電子媒体などを許可無く他の国から持ち込んだり作成したり流布したり違法に保管した者は1年以下の労働鍛錬刑に処す。前項の罪状が重い場合は5年以下の労働教化刑に処す。

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刑法184条(退廃的な行為を行った罪)
退廃的で色情的で醜い内容を反映した絵、写真、図書、録画物、電子媒体などを見たり聞いたりそのような行為を行った者は1年以下の労働鍛錬刑に処す。前項の罪状が重い場合は2年以下の労働教化刑に処す。

いずれの場合も最高でも5年の懲役で済むはずだ。しかしレズビアンカップルが処刑されているということから北朝鮮の司法が法に基づいて運用されていないことがわかる。近代法に基づいた裁判所というより封建時代の「お白洲」に近いようだ。

当然、このような司法制度のもとでは同性愛などの罪は、裁判官や地方幹部のさじ加減一つで合法にもなれば違法にもなる。