デイリーNKは2014年5月5日から8日間、特別取材チームによる中朝国境現地取材を敢行した。取材では中国遼寧省丹東や集安などの国境地域を訪れ、最新国境事情の取材のみならず私事旅行で訪中していた北朝鮮住民のインタビューにも成功。そのレポートを7回に渡って掲載する。

デイリーNK特別取材チームに実情を語る北朝鮮の女性
デイリーNK特別取材チームに実情を語る北朝鮮の女性

北朝鮮は人民のためという名目で綾羅(ルンラ)遊園地、文殊(ムンス)プール、馬息嶺(マシンリョン)スキー場など様々なレジャー施設を建設し、金正恩氏の「人民愛」「後代愛」と大々的に喧伝した。

金正恩氏は2014年の新年の辞でも「昨年、困難で複雑な環境の中で軍隊と人民が力を合わせて、経済大国建設と人民生活の向上のための闘争で輝かしき成果を収めた」「今年、人民経済部門で成し遂げた成果に我が国人民の幸せな笑い声が聞こえ人民の生活が良くなった」と自画自賛した。

しかし、北朝鮮の人々の反応は冷笑的だ。

「プール作るなら食べる問題の解決を」

デイリーNK特別取材チームは今月初めに、旅行で中国にやってきた北朝鮮の人とのインタビューを行った。彼は金正恩のハコモノ行政に強い不満を示した。

「文殊プールなど作るんだったら、人民の食べる問題を解決してほしい。自分の建てたいものを建てたんだから、そろそろ餓死する人が出ないように食べる問題に気を使うべきだ」

「こんな話をすればすぐに捕まるので心のなかで思っているだけ」

建設ラッシュで動員の回数が増え人々も不満が高まっている。

「住民が様々な建設に動員されて苦労している」

「工場の支配人に『金出せ、セメント出せ』と言われたらおとなしく差し出さなければならない。お金がなければ借りてでも差し出せと言われる」

徴兵検査不合格者はスキー場建設に動員

徴兵検査で不合格になった人々も馬息嶺スキー場建設事業に動員された。平安北道の義州(ウィジュ)出身のキム・ジョンナン(仮名)さんは次のように語る。

「学生が卒業する4月から8月の間に徴兵検査が行われるが、不合格になった人々は馬息嶺スキー場の建設に動員された。動員されず就職できた人はわずか」

「職場で行われた徴兵検査では全員不合格になって馬息嶺スキー場に動員された」

「中国だからこんな話ができるけど、北朝鮮で馬息嶺の悪口を言ったら大変なことになる」

平安北道の定州(チョンジュ)出身の別の人も次のように語る。

「馬息嶺スキー場を建設する際にうちの工場にも動員がかかった。実際に行った人は大変だったらしい」

「講演会や講習会では『辛くても少しだけ我慢しよう。将軍様だけを信じて我慢しよう』と繰り返し言われる」

どうせ金正恩の業績作り、みんな鼻で笑っている

平安北道新義州(シニジュ)出身のパク・ミンジュン(仮名)氏は次のように語る。

「レジャー施設の建設は金正恩の業績作りに過ぎない、人々は鼻で笑っている」

「あんなことのせいで人々の生活と国の経済はますます苦しくなるだろう」

平安南道价川(ケチョン)出身のイ?ジュヒ(仮名)氏は次のように語る。

「みんな『スキー場やプールを作る金で人民を食わせてほしい』と口々に言う」

「外国人観光客誘致のためという理屈はわかるが、それで一体いくらが儲かるというのか」

「金正恩は核実験と建設に使う莫大なお金をいくらかを人民のために使ってくれれば、とは思うが中々口に出せない」

証言者は一様に金正恩政権が「人民生活の向上」を掲げて建設したレジャー施設は庶民のためではなく高級幹部や平壌の一部住民のためだと不満をぶつけた。

金正恩氏への忠誠心など皆無

黄海南道(ファンヘナムド)の海州(ヘジュ)で上下水道管理の仕事をしているパク・サンホ(仮名)さんも次のように語る。

「レジャー施設を作っても生活問題の解決には役立たないので、いいように考えようにも考えられない」

「食べていくことで精一杯であんなところに遊びに行く時間も金もない」

「あんな施設はプロパガンダ用だ。人民のために作ったとは思えない」

「核実験やミサイルを作る金があるなら人民を食べさせてくれ」

「人々は金正恩氏への忠誠心があるように振る舞うが、実際に忠誠心は全くないと言ってもいいだろう」

【中朝国境取材レポート(6)】厳しい取締でも抑えられない北朝鮮の韓流ブーム

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