デイリーNKは2014年5月5日から8日間、特別取材チームによる中朝国境現地取材を敢行した。取材では中国遼寧省丹東や集安などの国境地域を訪れ、最新国境事情の取材のみならず私事旅行で訪中していた北朝鮮住民のインタビューにも成功。そのレポートを7回に渡って掲載する。

セウォル号沈没事故が発生した2日後。北朝鮮はようやく情報を伝えた。1週間後には朝鮮赤十字会中央委員会委員長名義の電話通知文を通じて哀悼の意を伝えた。

しかし、それ以降の北朝鮮は対韓国プロパガンダサイトのわが民族同士や朝鮮中央テレビなどでセウォル号事故に対する韓国政府の対応に批判を始めた。事故を利用して韓国国内の対立を煽ろうとする意図があるものと思われる。

北朝鮮の人々もセウォル号のことは知っているのだろうか。デイリーNK特別取材チームが今月初めに中朝国境地域で話を聞いたほとんどの北朝鮮の人はセウォル号のことを知っていた。皆一様に多くの生徒が亡くなったことを残念がりつつ「先頭に立って子どもたちを救おうとしなかった船長の過ち」を批判した。

北朝鮮は韓国政府の対応を初動から収拾に至るまで連日批判しているが、いざ北朝鮮で大災害が起きた場合どうなるのだろうか。北朝鮮の人々は事故が起きても対処もせず収拾努力もしないと語った。

もし船が沈没しそうになったら乗客を救助するよりも「金日成氏と金正日氏の肖像画」の救出を優先すると説明した。北朝鮮政府は火災や災害発生時に命がけで肖像画を守った事例があれば「首領決死擁護」の実例として大々的に宣伝するが、事件事故そのものの報道はしない。

まずは肖像画、子どもたちは後回し

平壌の大工、キム?ジェホ(仮名)さんは次のように語る。

「セウォル号の事故は聞いている。高校生が大勢亡くなったことは残念だ」

「高校生はすぐに脱出できたら生き残れたのに、船長が動くなと言って自分だけ脱出して助けられたのに見殺しにした」

平安北道(ピョンアンブクト)定州(チョンジュ)出身のユ・ビョンジュンさんはセウォル号の船長を批判しつつ北朝鮮の事情について次のように語る。

「乗客の高校生が自分の子どものように思っていたら、先に逃げ出すなんて到底できなかったはずだ」

「事故が起きたのが北朝鮮だったらこうなっていただろう。船長はいの一番に壁にかけられた金日成と金正日の肖像画を引き上げる。それから海に飛び込んで子どもたちを助ける」

「北朝鮮でセウォル号の船長のように逃げたらタダでは済まされない」

平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)出身のパク・ミンジュン(仮名)さんは次のように語る。

「北朝鮮は韓国政府の対応を批判しているが、北朝鮮であんな事故が起きたら何もしてくれないじゃないか」

「社会主義愛国烈士証を家族に渡して表彰するだけだ」

「北朝鮮ではセウォル号沈没より悲惨な大事故が頻繁に起きている」

「しかし、政府は事故のことを公開しないし、関係者にも箝口令が敷かれるので噂で伝わるだけだ」

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