連載企画「北朝鮮の同性愛事情」は今回で最終回。最後は「もし北朝鮮が開放されて同性愛が流れ込んだら何が起きるのか?」というテーマについて、現代韓国の同性愛事情とキリスト教の関連から考察してみたい。

「同性愛は消滅すべき罪悪」などと書かれたプラカードを持った保守キリスト教団体のメンバーが大邱(テグ)クイア・パレードの参加者と衝突している。(画像:読者提供)
「同性愛は消滅すべき罪悪」などと書かれたプラカードを持った保守キリスト教団体のメンバーが大邱(テグ)クイア・パレードの参加者と衝突している。(画像:読者提供)

平壌は「朝鮮のエルサレム」

同性愛に反対し憎悪を煽る韓国のプロテスタント。そもそも韓国にはなぜクリスチャンがこれほど多いのだろうか。

?「朝鮮のエルサレム」かつての平壌はそう呼ばれるほどクリスチャンの多い街だった。

19世紀末、福祉や教育分野に進出して布教を進めていたキリスト教だが、クリスチャンの数が爆発的に増えるきっかけとなったのは1907年に起きた平壌大復興だった。

これは平壌のとある教会で、宣教師と教会の指導者が公開の場で涙を流しながら懺悔を行っていたことをきっかけに、信者が急増したという出来事だ。1945年以前の朝鮮半島のクリスチャンの3分の2は現在の北朝鮮に集中していた。

金日成氏の父の金亨稷(キム・ヒョンジク)氏はミッションスクールの崇実(スンシル)学校(現在ソウルにある崇実大学校の前身)を卒業したクリスチャンだ。

母の康盤石(カン・バンソク)氏は平壌にあった長老派系のチルゴル教会の康敦煜(カン・ドヌク)長老の娘だ。「盤石」という名前は使徒ペテロにちなんでいる。

金日成氏の叔父で後に北朝鮮の副主席を務めた康良煜(カン・ヤンウク)氏も牧師だった。金日成氏自身もクリスチャンで中学2年生までは熱心に教会に通っていたと言われている。

朝鮮民主主義人民共和国の成立と朝鮮戦争をきっかけに北朝鮮にいた多くのクリスチャンが弾圧を逃れて韓国へと逃げてきた。1960年台には100万人程度だった韓国のクリスチャン(プロテスタント)人口は現在では1200万人に達している。

1200万人と言えば人口5000万の韓国においては非常に大きな影響力を持つ。韓国国内の最大宗派の長老派教会は非常に保守的で、政治的には「宗教右派」として影響力を行使する。

アメリカの長老派教会が同性婚を認めたことに対して「聖書の言葉をより固く守り、信仰の暮らしへと信者を導くべきアメリカ最大の長老教団がむしろ聖書の権威を無視してそれに反する決議を行ったことは到底許されることではない」と激しく非難し、同性婚認定の撤回を要求している。