牛で畑を耕す北朝鮮の農民(本文とは関係ありません)
牛で畑を耕す北朝鮮の農民(本文とは関係ありません)

軍用米が収められない農場は「分配」が与えられず

金正恩体制は、慢性的な食料難を打破するために農業現場に「分組管理制」を導入した。これは、農民を小グループに分けて田畑を担当させ収穫量に応じて分配することによって意欲向上を促し生産力アップを期待したものだった。

ところが、収穫が減っても責任を逃れるため「増えた」という虚偽報告が続出している。その結果、数字の帳尻合わせができなくなり、協同農場員への「年間決算分配」が実施できない状況となっている。

虚偽報告の続出について咸鏡北道のデイリーNK内部情報筋は次のように語った。

「協同農場管理委員会が農民に分配すべき分まですべて軍用米として献納したからだ」

「年間決算分配」とは収穫と脱穀の終わる年末に、各協同農場で行われる分配のことだ。協同農場が得た収入から生産費と管理運営費などの諸経費や軍用米などを除いた残り分が、農場員の分け前となる。

しかし、責任逃れのために「虚偽報告」をしても、その数字に基づいた割当量を収めなければならない。結果、個人が本来の取り分も持ち出すことになる。昨年の農業生産高について内部情報筋は次のように語った。

「干ばつの影響でトウモロコシなど全作物の収穫量は2013年の半分にしかならなかった」

「昨年11月末までに終えるはずだった軍用米の確保もできていない」

北朝鮮体制は「先軍政治」をスローガンとしており、軍への配給は最優先であり、何が何でも確保しなければならない。

このことから兵士たちも毎日協同農場の前に集まって軍用米を出せと催促しているが、これが農場員とトラブルの原因となった。

穀物奪われ農業に支障、意欲も低下

「軍人たちは分組を管理する責任者と一緒に、家々を回って隠しておいた穀物を出せと脅したり、家のあちこちを調べてなけなしの食糧を奪っていく。農場員と兵士の間でのトラブルは少なくない」

協同農場は国家計画委員会、農業省の方針に基づき軍用米の割り当てがあり最優先で確保しなければならない。生産量の7割と献納するのが一般的だ。

?しかし、農場員の立場からすれば、なけなしの穀物を奪われては来季の農作業の準備に支障をきたす。農場では穀物を分組員の家に持ち回りでこっそり隠すなどの「対先軍政治対策」を練ってきたが、軍隊側もそれを見越して農場員から収奪をしようとしているのだ。

「農場員達は汗水たらして1年間育てても全部取られたら『何のために農作業をしているのかわからない』と不満を述べている」(内部情報筋)

北朝鮮内部に渦巻く農場員たちの不平と不満は、金正恩体制が「先軍政治」から「先民政治」へ方向転換しない限り解消されることはないだろう。

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