そうやって利害を調整して行けば、いずれどこかで折り合いがつく。「核とミサイルを放棄する」「そのかわりカネをやる」という約束を互いに信じ合えるか、という問題もあるが、それも利害調整の範囲内だ。
だが政治犯の釈放――すなわち人権問題は、そうはいかない。政治犯収容所は、金正恩体制にとって「パンドラの箱」だ。どんなにカネを積まれても、進んでフタを開く選択肢などないのだ。
人権問題で続く堂々巡り
一方、米国はどうかといえば、こちらも北朝鮮の人権問題に対する姿勢は曖昧だ。ハッキリ言ってしまえば消極的である。
米国にとっては、自国の安全保障に直接影響する核・ミサイル問題の方が優先度は高い。彼らは交渉を通じてそうした危険要素を取り除こうとしているのであって、そのためには、北朝鮮に「見返り」を期待させなければならない。いまここで、北朝鮮の体制を脅かす人権問題を真正面から取り上げ、金正恩氏を絶望させるのは「得策でない」と踏んでいるのである。
そんな米国の胸の内を知ってか知らずか、北朝鮮は核・ミサイル開発の強度を高め、米国の気を引き、自らの値打ちを高めようと躍起だ。いや、もしかしたら彼らも、核やミサイルの問題がいずれ片付けば、次は人権問題を突き付けられることに気付いているのかもしれない。
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