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「不都合な真実」とはまさに「白頭の血統の頂点に君臨する金正恩同志には在日朝鮮人帰国者の血が流れている」ことだった。

それだけではない。高ヨンヒの父親・高京澤は、戦時中陸軍管轄の工場で働いた。これは北朝鮮の尺度からすれば「親日派」になる。戦後は日韓を往来する密航船で大もうけし何人もの愛人を囲ったが、北朝鮮からすればこの経歴も許しがたいものだろう。

筆者が昨年6月に訪れた中朝国境で数人の北朝鮮人に高ヨンヒのことを聞いてみたところ、皆が「元在日朝鮮人帰国者」であることを知っていた。つまり、偶像化を進めるための記録映画が「地雷」を踏んでしまったわけだ。

2012年の記録映画回収騒ぎ以後、高ヨンヒに関する話は一切出て来ない。彼女の存在を際立たせれば際立たせるほど、白頭の血統の正当性が揺らぐからだろう。