張成沢粛清後の北の幹部達は?北朝鮮のナンバー2張成沢が処刑から1年が経った。最高指導者(金正恩)の叔父で絶大な権力を持っていた張成沢は、なぜ粛清され、なぜ処刑までされたのだろうか。

連行される張成沢
特別軍事裁判につれていかれる張成沢/朝鮮中央テレビのキャプチャー

まずは、昨年(2013年)12月13日に労働新聞が報じた張成沢の処刑を伝える判決文の一部を見てみよう。

「(張成沢は)歴史的な朝鮮労働党第3回代表者会議ですべての党員と人民軍将兵、人民の総意によって金正恩元帥を朝鮮労働党中央軍事委員会の副委員長に高く推挙したという決定が宣布されて場内が熱狂的な歓呼で沸き返る時、やむを得ず席から立ち上がっていい加減に拍手し、ごう慢不遜に行動してわが軍隊と人民のこみ上げる憤怒をかき立てた。
(2013年12月13日労働新聞より)

「いい加減に拍手をした」ことが処刑の理由とは滑稽な話だが、張成沢粛清の理由を端的に表しているかもしれない。すなわち、金正恩独裁体制に障害となる人物が粛清されたという意味である。

粛清がどれほど北朝鮮権力層に影響を及ぼしたかは、その後の北朝鮮映像を見ると推測出来る。父親のような年の差がある幹部でさえも、金第一書記の前では丁寧に両手を前にする。また、彼の一言一句も逃さないように手帳に書き込む様子が頻繁に見られる。

叔父までも死に追いやった冷酷な金第一書記を目の当たりにした幹部達は、「自分も粛清されるかもしれない」という恐怖心で忠誠を捧げるしかない。

金正恩と北朝鮮の幹部
金正恩の前では年配の高級幹部も両手を前にする/朝鮮中央テレビのキャプチャー
金正恩とメモを取る幹部
金正恩の前で熱心にメモを取る幹部達/朝鮮中央テレビのキャプチャー

そういった意味では、張成沢粛清後の1年間で金正恩の権力が強固になったと分析される。

それにしても、息子のような金第一書記の前で礼儀正しく振る舞う高位級幹部たちの姿は、「忠実な部下」というより「哀れな人間」に見える。まるで「(忠実に振る舞うことが)生存するための苦闘」とでも言いたくなる。

北朝鮮は、三代続く全体主義的独裁だが、金日成時代には、金日成と抗日パルチザン活動を共に闘った仲間の間で自発的な「忠誠雰囲気」があった。

金日成にとって抗日武装闘争で培われた連帯意識こそが、権力闘争を勝ち抜くための最大の武器だった。解放直後の熾烈な権力闘争のなかで、敵対グループを粛清し、政権を掌握する過程で「抗日パルチザン系」の自発的な忠誠心は重要な役割を果たした。

しかし、一見、強固になった金正恩の周辺に自発的な「忠誠グループ」があるようには見えない。自発的な忠誠心とは、困難な時代を共に経験したことから生まれる「感情」だからだ。金正恩の周辺に群がる人物がこのような「感情」を持っているかどうかは疑わしい。

金正恩体制が本当に安定するかどうかは金正恩自身が彼に忠誠を捧げる「忠誠グループ」を構築できるかにかかっている。

(アン・ジョンシクSBS政治部次長)

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