中東の緊張が高まる中、今月9日、湾岸の小国バーレーンで発生した爆発が、防空の在り方に新たな疑問を投げかけている。住宅地で起きた爆発では多数の民間人が負傷し、女性1人が死亡したとの情報もある。各種分析からは、迎撃に使用されたパトリオット・ミサイルが関与した可能性が高いとみられている。
バーレーン政府は、イラン側のドローン攻撃に対処するため同システムを使用したことを認め、「迎撃により被害の拡大を防いだ」と強調する。一方、専門家の分析では、迎撃ミサイルが市街地上空で爆発し、その破片や衝撃波が地上の被害を引き起こした可能性が指摘されている。迎撃自体は成功していたとしても、その「成功」が別の被害を生んだ構図だ。こうした事例は、防空システム、とりわけ終末段階迎撃の構造的な限界を浮き彫りにする。終末段階迎撃とは、飛来するミサイルやドローンを着弾直前に撃ち落とす方式で、都市や重要施設を守る最後の防壁とされる。しかし、迎撃のタイミングが遅いほど、戦闘は市街地の上空で行われることになる。
高高度での迎撃を担うTHAADのようなシステムと異なり、パトリオットは比較的低い高度での迎撃が中心となる。このため、迎撃時に発生する破片や残骸がそのまま地上に降り注ぐリスクが避けられない。
特に近年、脅威の中心となっている小型ドローンや巡航ミサイルは、完全に破壊することが難しい。迎撃に成功しても機体の一部や搭載爆薬が落下し、結果として地上に被害をもたらすケースが増えている。防空の現場では「撃ち落とせば安全」という従来の前提が揺らぎつつある。
さらに、都市上空での迎撃では、迎撃ミサイル自体の破片も危険となる。近接信管で爆発するタイプの迎撃体は多数の金属片を飛散させるため、広範囲に被害を及ぼす可能性がある。より近距離で迎撃を行うC-RAMでは、発射された弾丸そのものが落下する問題も指摘されている。
こうした「迎撃のパラドックス」は、防空の宿命とも言える。迎撃に失敗すれば目標が直撃し、成功しても破片被害が発生し得る。つまり、防御行動そのものが一定のリスクを伴う構造になっているのだ。
